テナントに追加の VMware Cloud Director 機能を提供する拡張機能を作成するために、サービス プロバイダは VMware Cloud Director API を使用できます。
定義済みエンティティは、VMware Cloud Director が管理できる外部リソースを表します。拡張機能とユーザー インターフェイス プラグインの開発者は、ランタイム定義エンティティを作成し、拡張機能とユーザー インターフェイス プラグインを有効にして、拡張機能固有の情報を VMware Cloud Director に保存および操作できます。拡張機能を作成して、状態または外部リソースへの参照を保存する必要がある場合、その拡張機能ではローカル データベースの代わりにランタイム定義エンティティを使用できます。たとえば、Kubernetes 拡張機能は、管理している Kubernetes クラスタに関する情報をランタイム定義エンティティに保存できます。この拡張機能は、ランタイム定義エンティティの情報を使用して、これらのクラスタを管理するための拡張 API を提供できます。
ランタイム定義エンティティにアクセスするには、VMware Cloud Director API を使用する必要があります。管理者権限を持つユーザーは、拡張機能によって作成された定義済みエンティティの状態を確認することで、拡張機能の動作を追跡および監視できます。定義済みエンティティの状態は、拡張機能の問題をトラブルシューティングする場合にも役立ちます。
定義済みエンティティ タイプ
保存できる情報のスキーマは、定義済みエンティティを使用して実行時に定義します。このスキーマは、JSON ドキュメントを使用してエンティティ タイプで定義されます。定義済みエンティティ タイプの作成時には、仮想マシンや vApp に類似した新しいカスタム VMware Cloud Director タイプを作成して、拡張機能および動作別に管理できます。たとえば、NativeContainerCluster
というエンティティ タイプについて検討する場合、このタイプの各インスタンスには特定の Kubernetes クラスタに関する情報が含まれます。クラスタに関する情報を取得するために、Container Service Extension は VMware Cloud Director API を使用して VMware Cloud Director と通信し、必要な情報をユーザーに提供します。
定義済みエンティティ タイプのインスタンスを作成すると、タイプ、スキーマ、および動作を変更できなくなります。エンティティ タイプに新しい機能を追加するには、新しいバージョンのタイプを作成する必要があります。定義済みエンティティ インスタンスが以前のバージョンのエンティティ タイプに基づいている場合は、エンティティのタイプ プロパティを新しいタイプの ID に設定することで、新しいバージョンのタイプを使用するように定義済みエンティティをアップグレードできます。定義済みエンティティの作成時には、API 呼び出しで、エンティティ プロパティの内容がエンティティ タイプで指定された JSON スキーマと一致する必要があります。エンティティ タイプへのアクセス権は、特定のユーザーと組織にのみ付与できます。エンティティ タイプのバージョンごとに異なるアクセス制限を設定できます。
エンティティ タイプのスキーマでは、さまざまなコンテンツ フィールドへのアクセス権を指定できます。プロパティは public
、protected
、または private
としてマークできます。
プロパティのステータス | アクセス コントロール |
---|---|
Public | すべてのユーザーがフィールドを表示および変更できます。 |
Protected | すべてのユーザーがフィールドを表示できます。フィールドを作成および変更できるのは、完全コントロール アクセス権を持つユーザーのみです。ユーザーには、管理者の完全コントロール:TYPE 権限、または完全コントロール:TYPE 権限と完全コントロール ACL の両方が必要です。 |
Private | フィールドを表示、作成、および変更できるのは、完全コントロール アクセス権を持つユーザーのみです。ユーザーには、管理者の完全コントロール:TYPE 権限、または完全コントロール:TYPE 権限と完全コントロール ACL の両方が必要です。 |
clusterState
の JSON スキーマは次のようになります。
"clusterState" : { "type" : "string", "x-vcloud-restricted" : "protected" }
インターフェイスと動作
定義済みエンティティには、動作の定義に使用できるインターフェイスもあります。Kubernetes の例を使用する場合、各クラスタ エンティティ タイプには、コンテナ クラスタ インターフェイスで定義された動作の異なる実装があります。Tanzu Kubernetes クラスタ タイプの動作では vSphere と通信して必要なアクションを実行し、ネイティブのコンテナ クラスタ タイプの動作では Container Service Extension と通信します。
すべてのユーザーは、定義済みエンティティのインターフェイスを表示できます。
動作を定義する方法は複数あります。
- vRealize Operations ワークフローを作成および公開し、ワークフローを呼び出す動作を作成できます。
- Webhook を使用して、任意の機能を動作にリンクできます。
- MQTT の動作では、拡張機能に含まれる機能を呼び出すことができます。MQTT を使用すると、拡張機能と直接通信できます。拡張機能はより詳細なステータスを提供できます。
- インターフェイス API ID の形式:
urn:vcloud:interface:vendor_name:interface_name:version
- タイプ API ID の形式:
urn:vcloud:type:vendor_name:type_name:version
- 動作 API ID の形式:
urn:vcloud:behavior-interface:behavior_name:vendor_name:interface_name:version
またはurn:vcloud:behavior-type:behavior_name:vendor_name:interface_name:version
ランタイム定義エンティティの作成
定義済みエンティティを作成するには、まず外部リソースを構成し、定義済みエンティティに必要な情報を追加します。このプロセスには、数回の反復が必要な場合があります。定義済みエンティティを解決するには、スキーマの内容に必要な情報がすべて含まれていることを確認する必要があります。内容がタイプで指定された JSON スキーマと一致しない場合は、定義済みエンティティの状態が Resolution_Error
に変わります。情報を正しく入力すると、定義済みエンティティの状態が Resolved
に変わり、使用可能になります。
実行時間の長いランタイム定義エンティティのすべての操作がタスクによって追跡されるため、VMware Cloud Director ユーザー インターフェイスを使用して、定義済みエンティティの作成や動作の呼び出しなどを監視できます。定義済みエンティティのステータスが Resolved
に変わると、ユーザー インターフェイスの対応するタスクが Succeeded
と表示されます。
1 つのテナント組織に作成した定義済みエンティティを別の組織内のテナントと共有することはできません。System
組織に作成した定義済みエンティティは、テナント ユーザーまたはテナント組織と共有できます。
定義済みエンティティを作成するためのサンプル API 呼び出し
次の例は、pksContainerCluster
タイプの新しいエンティティを作成するためのサンプル API 呼び出しを示しています。
POST https://host/cloudapi/1.0.0/entityTypes/urn:vcloud:type:vendorA:pksContainerCluster:1.0.0 { "name": "testEntity", "entity": { "cluster": { "name": "testCluster", "nodes": ["node1"] } } }
定義済みエンティティ インスタンスへのアクセス
ランタイム定義エンティティへのアクセスは 2 つの補完的なメカニズムで制御されます。
-
権限 - ランタイム定義エンティティ タイプを作成した場合は、そのタイプの権限バンドルを作成します。特定の操作に対するアクセス権を提供するには、このバンドルから他のロールに権限を割り当てる必要があります。各バンドルには、表示:TYPE、編集:TYPE、完全コントロール:TYPE、管理者の表示:TYPE、管理者の完全コントロール:TYPE という 5 つのタイプ固有の権限があります。
表示:TYPE、編集:TYPE、および 完全コントロール:TYPE 権限は、ACL エントリと組み合わせた場合のみ機能します。
-
アクセス コントロール リスト (ACL) - ACL テーブルには、システム内の特定のエンティティに対してユーザーが保持しているアクセス権を定義するエントリが含まれています。これによりエンティティの制御レベルを強化することができます。たとえば、編集:TYPE 権限は、ユーザーがアクセス権を持つエンティティは、そのユーザーが変更できることを示します。一方、ACL テーブルは、そのユーザーがアクセスできるエンティティを定義します。
全般 ACL の表示権限を持つシステム管理者は、
accessControls
API を使用して特定の定義済みエンティティに割り当てられた ACL を表示できます。VMware Cloud Director API リファレンスについては、code.vmware.com を参照してください。全般 ACL の管理 権限を持つシステム管理者は、
accessControls
API を使用して特定の ACL を作成、変更、および削除することができます。
エンティティの操作 | オプション | 説明 | |
---|---|---|---|
読み取り | 管理者の表示:TYPE 権限 | この権限を持つユーザーは、組織内にあるこのタイプのすべてのランタイム定義エンティティを表示できます。 | |
表示:TYPE 権限および表示以上の ACL エントリ | この権限および読み取りレベルの ACL を持つユーザーは、このタイプのランタイム定義エンティティを表示できます。 | ||
変更 | 管理者の完全コントロール:TYPE 権限 | この権限を持つユーザーは、すべての組織内にあるこのタイプのランタイム定義エンティティを作成、表示、変更、および削除できます。 | |
編集:TYPE 権限および変更以上の ACL エントリ | この権限および変更レベルの ACL を持つユーザーは、このタイプのランタイム定義エンティティを作成、表示、および変更できます。 | ||
削除 | 管理者の完全コントロール:TYPE 権限 | この権限を持つユーザーは、すべての組織内にあるこのタイプのランタイム定義エンティティを作成、表示、変更、および削除できます。 | |
完全コントロール:TYPE 権限および完全コントロールの ACL エントリ | この権限および完全コントロール レベルの ACL を持つユーザーは、このタイプのランタイム定義エンティティを作成、表示、変更、および削除できます。 |
VMware Cloud Director API またはユーザー インターフェイスを使用して、このタイプのエンティティを管理する組織に権限バンドルを公開できます。権限バンドルを公開した後に、バンドルから組織内のロールに権限を割り当てることができます。
VMware Cloud Director API を使用して、ACL テーブルを編集できます。
定義済みエンティティのインターフェイスとタイプの操作へのアクセス
定義済みエンティティのインターフェイスとタイプの操作には、特定のサービス プロバイダには付与されていない可能性のある特定の権限が必要です。操作を実行する前に、必要な権限が付与されていることを確認します。
操作 | 要件 |
---|---|
インターフェイスの表示とクエリ | すべてのユーザーに必要な権限が付与されている。 |
インターフェイスの作成 | カスタム エンティティ定義の新規作成権限が必要。 |
インターフェイスの編集 | カスタム エンティティ定義の編集権限が必要。 |
インターフェイスの削除 | カスタム エンティティ定義の削除権限が必要。 |
タイプの作成 | カスタム エンティティ定義の新規作成権限が必要。 |
タイプの表示 | 最小要件は ReadOnly タイプ ACL。 |
タイプの編集と削除 | カスタム エンティティ定義の編集/削除権限と FullControl タイプ ACL が必要。 |
ランタイム定義エンティティの操作
定義済みエンティティで動作を呼び出すには、エンティティの状態が Resolved
である必要があります。定義済みエンティティを削除するには、エンティティの状態が Resolved
または Resolution_Error
である必要があります。
エンティティ タイプとインターフェイスは、インスタンスがない場合にのみ変更できます。参照先のエンティティ タイプを変更するには、そのバージョンを変更する必要があります。
定義済みエンティティへのアクセスに関する問題を診断するには、エンティティ ACL クエリ API を使用して、必要な権限を確認します。また、エンティティ タイプの権限バンドルは、それを使用するテナントに公開する必要があります。