SLED/SLES 仮想マシン (VM) でスマート カード リダイレクトを構成するには、スマート カードの信頼された認証をサポートするため、機能が依存するライブラリとルート CA 証明書をインストールします。また、一部の構成ファイルを編集して、認証設定を完了する必要があります。

説明の中で、Active Directory ドメインの DNS 名などのネットワーク構成のエンティティをプレースホルダーで表している部分があります。次の表を参考にして、これらのプレースホルダーの値をご使用の環境に合わせて変更してください。

プレースホルダーの値 説明
dns_IP_ADDRESS DNS ネーム サーバの IP アドレス
mydomain.com Active Directory ドメインの DNS 名
MYDOMAIN.COM Active Directory ドメインの DNS 名。すべて大文字にします。
MYDOMAIN ワークグループの DNS 名または Samba サーバが含まれている NT ドメインの DNS 名。すべて大文字にします。
ads-hostname Active Directory サーバのホスト名
ads-hostname.mydomain.com Active Directory サーバの完全修飾ドメイン名 (FQDN)
mytimeserver.mycompany.com NTP タイム サーバの DNS 名
AdminUser 仮想マシン管理者のユーザー名

前提条件

スマート カード リダイレクトでの SLED/SLES 仮想マシンと Active Directory の統合で説明する手順を実行します。

手順

  1. 必要なライブラリ パッケージをインストールします。
    1. PAM ライブラリと他のパッケージをインストールします。
      # zypper install pam_pkcs11 mozilla-nss mozilla-nss-tools 
          pcsc-lite pcsc-ccid opensc coolkey pcsc-tools

      上記のパッケージをすべてインストールするときに、PackageHub などの拡張機能を有効にしなければならない場合があります。

    2. インストールされているパッケージを使用するには、PackageHub などの拡張機能を有効にして、PC/SC ツールをインストールします。たとえば、SLED/SLES 12 SP3 の場合は、次のコマンドを実行します。
      # SUSEConnect --list-extensions
      # SUSEConnect -p PackageHub/12.3/x86_64
      # zypper in pcsc-tools
  2. ルート CA 証明書をインストールします。
    1. ルート CA 証明書をダウンロードし、システムの /tmp/certificate.cer に保存します。ルート CA 証明書をエクスポートする方法を参照してください。
    2. ダウンロードしたルート CA 証明書を .pem ファイルに転送し、ハッシュ ファイルを作成します。
      # openssl x509 -inform der -in /tmp/certificate.cer -out /tmp/certificate.pem
      # cp /tmp/certificate.pem /etc/pam_pkcs11/cacerts
      # chmod a+r /etc/pam_pkcs11/cacerts/certificate.pem
      # cd /etc/pam_pkcs11/cacerts
      # pkcs11_make_hash_link
    3. NSS データベースにトラスト アンカーをインストールします。
      # mkdir /etc/pam_pkcs11/nssdb
      # certutil -N -d /etc/pam_pkcs11/nssdb
      # certutil -L -d /etc/pam_pkcs11/nssdb
      # certutil -A -n rootca -i certificate.pem -t "CT,CT,CT" -d /etc/pam_pkcs11/nssdb
    4. 必要なドライバをインストールします。
      # cp libcmP11.so /usr/lib64/
      # modutil -add "piv card 2.0" -libfile /usr/lib64/libcmP11.so -dbdir /etc/pam_pkcs11/nssdb/
  3. /etc/pam_pkcs11/pam_pkcs11.conf ファイルを編集します。
    1. use_pkcs11_module = nss を削除します。この場所に、行 use_pkcs11_module = mysc を追加します。
    2. 次の例のように、mysc モジュールを追加します。
      pkcs11_module mysc {
        module = /usr/lib64/libcmP11.so;
        description = "MY Smartcard";
        slot_num = 0;
        nss_dir = /etc/pam_pkcs11/nssdb;
        cert_policy = ca, ocsp_on, signature, crl_auto;
      }
    3. 次の例のように、共通名のマッパー構成を更新します。
      # Assume common name (CN) to be the login
      mapper cn {
            debug = false;
            module = internal;
            # module = /usr/lib64/pam_pkcs11/cn_mapper.so;
            ignorecase = true;
            mapfile = file:///etc/pam_pkcs11/cn_map;}
    4. use_mappers = ms を削除します。この場所に、行 use_mappers = cn, null を追加します。
  4. 次の行を含むように、/etc/pam_pkcs11/cn_map 構成ファイルを編集します。
    ads-hostname -> ads-hostname
  5. PAM の設定を変更します。
    1. スマート カード認証を構成できるように、まず pam_config ツールを無効にします。
      # find /etc/pam.d/ -type l -iname "common-*" -delete
      # for X in /etc/pam.d/common-*-pc; do cp -ivp $X ${X:0:-3}; done
    2. /etc/pam.d/ ディレクトリの下に、common-auth-smartcard という名前のファイルを作成します。次の内容をファイルに追加します。
      auth    required        pam_env.so
      auth    sufficient      pam_pkcs11.so
      auth    optional        pam_gnome_keyring.so
      auth    [success=1 default=ignore]      pam_unix.so nullok_secure try_first_pass
      auth    required        pam_winbind.so  use_first_pass
    3. /etc/pam.d/gdm/etc/pam.d/xscreensaver の両方のファイルで、行 auth include common-auth を行 auth include common-auth-smartcard で置き換えます。
  6. 仮想マシンの再起動後に自動的に起動するように pcscd サービスを構成するには、使用している SLED/SLES のバージョンに対応しているファイルを編集します。
    • (SLED/SLES 12.x) /etc/init.d/after.localrcpcscd start 行を追加します。ファイルは次のようになります。
      #! /bin/sh
      #
      # Copyright (c) 2010 SuSE LINUX Products GmbH, Germany. All rights reserved.
      #
      # Author: Werner Fink, 2010
      #
      # /etc/init.d/after.local
      #
      # script with local commands to be executed from init after all scripts
      # of a runlevel have been executed.
      #
      # Here you should add things, that should happen directly after
      # runlevel has been reached.
      #
      rcpcscd start
    • (SLED/SLES 15.x) /usr/lib/systemd/system/pcscd.serviceWantedBy=multi-user.target 行を追加します。ファイルは次のようになります。
      [Unit]
      Description=PC/SC Smart Card Daemon
      Requires=pcscd.socket
      
      [Service]
      ExecStart=/usr/sbin/pcscd --foreground --auto-exit
      ExecReload=/usr/sbin/pcscd --hotplug
      
      [Install]
      Also=pcscd.socket
      WantedBy=multi-user.target
      pcscd.service ファイルを編集した後、次のコマンドを実行します。
      systemctl enable pcscd
    注: 仮想マシンの再起動後に pcscd サービスが起動しない場合、pam_pkcs11 を介した最初のログインが失敗します。
  7. ファイアウォールを無効にします。
    # rcSuSEfirewall2 stop
    # chkconfig SuSEfirewall2_setup off
    # chkconfig SuSEfirewall2_init off
    注: ファイアウォールが有効になっていると、スマート カード リダイレクトが失敗することがあります。
  8. PC/SC Lite ライブラリをバージョン 1.8.8 にアップデートします。
    1. 依存パッケージのインストールに必要な拡張機能とモジュールを有効にします。
      • (SLED/SLES 12.x) 次のコマンドを実行します。<SUSE-version> は、ディストリビューションのバージョン番号に置き換えます。たとえば、SLED/SLES 12 SP5 の場合は 12.5 を使用します。
        # SUSEConnect -p sle-sdk/<SUSE-version>/x86_64
      • (SLED/SLES 15.x) 次のコマンドを実行します。<SUSE-version> は、ディストリビューションのバージョン番号に置き換えます。たとえば、SLED/SLES 15 SP3 の場合は 15.3 を使用します。
        # SUSEConnect -p PackageHub/<SUSE-version>/x86_64
    2. PC/SC Lite ライブラリを更新します。
      # zypper in git autoconf automake libtool flex libudev-devel gcc
      # git clone https://salsa.debian.org/rousseau/PCSC.git
      # cd PCSC/
      # git checkout -b pcsc-1.8.8 1.8.8
      # ./bootstrap
      # ./configure -program-prefix= --disable-dependency-tracking --prefix=/usr --exec-prefix=/usr 
        --bindir=/usr/bin --sbindir=/usr/sbin --sysconfdir=/etc --datadir=/usr/share --includedir=/usr/include  
        --libdir=/usr/lib64 --libexecdir=/usr/libexec --localstatedir=/var --sharedstatedir=/var/lib64 
        --mandir=/usr/share/man --infodir=/usr/share/info --disable-static --enable-usbdropdir=/usr/lib64/pcsc/drivers
      # make
      # make install
  9. (SLED/SLES 15.x) スマート カードのログイン画面を正しく機能させるため、仮想マシン上のファイル org.gnome.Shell.desktop を変更します。
    1. /usr/share/applications/org.gnome.Shell.desktop ファイルを開きます。
    2. ファイルで、次の行を探して、Exec=/usr/bin/gnome-shell で置き換えます。
      Exec=sh -c "DISPLAY=:${DISPLAY##*:} exec /usr/bin/gnome-shell"
      
    3. ファイルを保存して閉じます。
  10. Horizon Agent パッケージをインストールして、スマート カード リダイレクトを有効にします。
    # sudo ./install_viewagent.sh -m yes
  11. 仮想マシンを再起動して、再度ログインします。