VMware Identity Manager を使用して登録した ThinApp パッケージを VMware Identity Manager ユーザーが実行できるようにするには、ユーザーの Windows システムに VMware Identity Manager Desktop アプリケーションがインストールされ実行されている必要があります。

ThinApp パッケージは、仮想 Windows アプリケーションです。ThinApp パッケージが Windows システムに配布されると、Windows システムにログインしたユーザーは、Windows システムに登録されたそれらの ThinApp パッケージを起動および実行することができます。VMware Identity Manager を使用して、VMware Identity Manager と互換性のある ThinApp パッケージを配布および管理できます。

ユーザーによる Windows ログイン セッションでこれらの仮想アプリケーションのいずれかが正常に起動および実行されるためには、次の要素が必要となります。
  • そのユーザーが使用するために、仮想アプリケーションの ThinApp パッケージが、VMware Identity Manager により登録されている。
  • 使用される Windows システムで特定の DLL が利用できる。
  • hws-desktop-client.exe プロセスが実行中である。
互換性のある ThinApp パッケージが作成されると、ログイン ユーザーがログインした Windows セッションで仮想アプリケーションを起動したときに、特定の DLL をロードするよう構成されます。このとき、仮想アプリケーションにより DLL のロードが試行されます。DLL がロードされると、ローカルにインストールされている VMware Identity Manager Desktop アプリケーションにより、その ThinApp パッケージが Windows デスクトップでそのユーザーに対して登録されているかどうかを検証しようとします。ローカルにインストールされている VMware Identity Manager Desktop アプリケーションは、 VMware Identity Manager と通信せずに、そのアプリケーションがユーザーに対して登録されているかどうかを判断します。アプリケーションが Windows デスクトップでそのユーザーに対して登録されている場合、 VMware Identity Manager Desktop アプリケーションは、 VMware Identity Manager と最後に同期された時期を確認します。 VMware Identity Manager Desktop アプリケーションより、最後の同期後の経過時間が、インストールされているクライアントに対して構成されたオフライン猶予期間内であることが確認されると、クライアントはアプリケーションの実行を許可します。

Windows システムでこの DLL が使用されるのは、VMware Identity Manager Desktop アプリケーションがインストールされている場合のみであり、VMware Identity Manager Desktop アプリケーションがそのシステム上で実行されている場合は、hws-desktop-client.exe プロセスが実行中であるため、VMware Identity Manager Desktop アプリケーションを Windows システムにインストールして、VMware Identity Manager によって配布および管理される ThinApp パッケージを実行する必要があります。

ThinApp パッケージを使用するための VMware Identity Manager Desktop アプリケーションの展開

VMware Identity Manager Desktop アプリケーションは、そのインストーラ EXE ファイルをダブルクリックする、コマンド ライン オプションを使用して実行可能ファイルを実行する、またはコマンド ライン オプションを使用するスクリプトを実行するのいずれかの方法よりインストールできます。アプリケーションをインストールするには、ローカルの管理者権限が必要です。インストーラの EXE ファイルをダブルクリックして VMware Identity Manager Desktop アプリケーションをインストールする方法については、『VMware Identity Manager ユーザー ガイド』を参照してください。

インストールしたアプリケーションの構成により、VMware Identity Manager が配布する ThinApp パッケージを Windows システムに展開する方法が決まります。デフォルトでは、インストーラの EXE ファイルをダブルクリックして VMware Identity Manager Desktop アプリケーションをインストールすると、クライアントは AUTO_TRY_HTTP オプションが有効な COPY_TO_LOCAL 展開モードで ThinApp パッケージを展開するように構成されます。このデフォルトのインストーラ オプションの結果、いわゆるダウンロード展開モードになります。COPY_TO_LOCAL と AUTO_TRY_HTTP を使用するデフォルト設定では、クライアント アプリケーションはまず Windows システムのエンドポイントに ThinApp パッケージをコピーする方法で、ThinApp パッケージをダウンロードしようとします。この方法が失敗すると、クライアント アプリケーションは HTTP を使用して ThinApp パッケージをダウンロードします。

ThinApp リポジトリにアカウントを使用してアクセスするように VMware Identity Manager を構成している場合、クライアント アプリケーションは HTTP を使用して ThinApp パッケージをダウンロードできます。ThinApp パッケージをローカル Windows システムにダウンロードしたら、ローカル システムで仮想アプリケーションを実行します。

仮想アプリケーションをローカル Windows システムにダウンロードすると Windows システムの領域が使用されるので、これを避けるため、ユーザーがいわゆるストリーミング展開モードを使用してネットワーク共有から ThinApp パッケージを実行するように設定できます。ユーザーがストリーミング モードを使用して ThinApp パッケージを実行できるようにするには、コマンドライン インストール プロセスを使用して Windows システムに VMware Identity Manager Desktop アプリケーションをインストールする必要があります。インストーラには、ThinApp パッケージにランタイム展開モードを設定するために使用するコマンドライン オプションが用意されています。ランタイム展開モードを設定して ThinApp パッケージをストリームするには、RUN_FROM_SHARE インストーラ オプションを使用します。

VMware Identity Manager Desktop アプリケーションを複数の Windows システムにインストールする 1 つの方法として、スクリプトを使用してアプリケーションを Windows システムにサイレント インストールします。同時に複数の Windows システムにクライアントをサイレント インストールできます。
注: サイレント インストール プロセス中は、メッセージやウィンドウは表示されません。
スクリプトを使用してインストールしたクライアントが、ThinApp パッケージの展開に ThinApp ダウンロード モード(COPY_TO_LOCAL オプションや HTTP_DOWNLOAD オプションなど)のいずれか、ThinApp ストリーミング モード、または RUN_FROM_SHARE オプションを使用するかどうかを示す値をスクリプトに設定します。

Windows エンドポイント上の ThinApp パッケージに適切な展開モードの決定

Windows エンドポイントの VMware Identity Manager Desktop アプリケーションの構成により、VMware Identity Manager を使用して配布される ThinApp パッケージの展開に、ThinApp ダウンロード モードのいずれか(COPY_TO_LOCAL または HTTP_DOWNLOAD)、ThinApp ストリーミング モード、または RUN_FROM_SHARE を使用するかどうかが決まります。デスクトップ コンピュータやラップトップ コンピュータなどの Windows エンドポイントに VMware Identity Manager Desktop アプリケーションをサイレント インストールするスクリプトを作成する場合は、ThinApp パッケージ展開モードを設定するオプションを指定します。ネットワーク レイテンシなどを考慮しながら、選択したエンドポイントのネットワーク環境に最適な展開モードを選択します。

ストリーミング モードでは、VMware Identity Manager Desktop アプリケーションを VMware Identity Manager と同期するときに、クライアントが ThinApp パッケージの仮想 Windows アプリケーションのアプリケーション ショートカットを Windows デスクトップにダウンロードします。ユーザーが ThinApp パッケージを起動すると、仮想 Windows アプリケーションは ThinApp パッケージが配置されているファイル共有で実行されます。

そのため、ストリーミング モードは、Horizon デスクトップなどのネットワーク共有に常に接続するシステム用に最適です。

ダウンロード モードでは、最初に ThinApp パッケージを使用または更新するときに、まず ThinApp パッケージが Windows システムにダウンロードされ、その後ショートカットが作成されるまで待機する必要があります。初回ダウンロードが終了したら、ローカル Windows システムで仮想 Windows アプリケーションを起動して実行します。

重要: フローティングまたはステートレス Horizon デスクトップとも呼ばれる非永続型 Horizon デスクトップでは、クライアントのインストール時にコマンドライン インストーラ オプション /v INSTALL_MODE=RUN_FROM_SHARE を使用して ThinApp ストリーミング モードでクライアントを設定することをお勧めします。フローティング Horizon デスクトップで ThinApp パッケージを使用する場合は、RUN_FROM_SHARE オプションが最適なランタイムを実現します。 VMware Identity Manager Desktop 用のコマンド ライン インストーラ オプションを参照してください。
重要: HTTP_DOWNLOAD モードでは、ユーザーの Windows マシンから IDP URL にアクセスできる必要があります。RUN_FROM_SHARE および COPY_TO_LOCAL モードでは、ユーザーの Windows マシンから ThinApp 共有にアクセスできる必要があります。
表 1. ThinApp パッケージとしてキャプチャされた仮想アプリケーションの ThinApp 展開モード
モード 説明
ThinApp ストリーミング モード ThinApp ストリーミング モードでは、仮想アプリケーションは起動のたびにストリームされます。この方法では、仮想アプリケーションをデスクトップにコピーする際に使用されるはずのデスクトップのディスク容量を使用せずに済みます。アプリケーションを実行するには、デスクトップが ThinApp パッケージのネットワーク共有に接続されている必要があります。

次のような環境では、必要とされる一貫性と安定性がもたらされる可能性が高くなります。

  • ThinApp パッケージが配置されているファイル共有への接続に優れている Horizon デスクトップ(ステートレスまたはパーシステント)。
  • Horizon デスクトップではなく、複数ユーザーが共有する Windows デスクトップを使用するユーザー。この場合は、ダウンロードしたユーザー固有のアプリケーションがディクスで蓄積されるのを回避できます。また、ダウンロードによる遅れを生じさせることなく、ユーザーに固有のアプリケーションに迅速にアクセスできます。

Windows システムにログインするために使用するアカウントは、ネットワーク共有から ThinApp パッケージを取得する際に使用します。そのアカウントには、ネットワーク共有からファイルを読み取って実行するための適切な権限が必要です。

ThinApp ダウンロード モード ThinApp ダウンロード モードでは、アプリケーションは Windows エンドポイントにダウンロードされます。ユーザーは、エンドポイントでローカルに仮想アプリケーションを実行します。次のような状況では、ThinApp ダウンロード モードをお勧めします。
  • パーシステント Horizon デスクトップを使用している
  • 定期的にオフラインになる LAN 接続型デスクトップを使用している
  • ネットワーク レイテンシが貧弱な LAN を使用している

VMware Identity Manager では、次の 2 種類の ThinApp ダウンロード モードが提供されます。 COPY_TO_LOCAL および HTTP_DOWNLOAD。クライアントに COPY_TO_LOCAL を設定した場合、AUTO_TRY_HTTP オプションを有効にして、ThinApp パッケージのネットワーク共有にアカウントを使用してアクセスするように VMware Identity Manager を構成している場合を除き、Windows エンドポイントはファイル共有と同じドメインに参加する必要があります。

AUTO_TRY_HTTP オプションが有効で、アカウントを使用してアクセスするように VMware Identity Manager を構成している場合に、Windows エンドポイントが同じドメインに参加していなかったり、ThinApp パッケージの初回ダウンロードに失敗すると、VMware Identity Manager Desktop アプリケーションは、HTTP_DOWNLOAD モードで HTTP プロトコルを使用して ThinApp パッケージを自動的にダウンロードします。HTTP_DOWNLOAD を使用する場合、Windows エンドポイントはファイル共有と同じドメインに参加する必要はありません。ただし、HTTP_DOWNLOAD を使用する場合のコピーおよび同期にかかる時間は、COPY_TO_LOCAL を使用する場合に比べてかなり長くなります。

重要: VMware Identity Manager で、アカウントを使用するアクセスが有効になっていないと、AUTO_TRY_HTTP が有効な場合やクライアントが HTTP_DOWNLOAD オプションを使用して設定されている場合でも、HTTP プロトコルを使用するダウンロードは動作しません。

COPY_TO_LOCAL を使用する場合は、Windows システムにログインするために使用するアカウントをネットワーク共有から ThinApp パッケージを取得する際に使用します。そのアカウントには、ネットワーク共有からファイルを読み取ってコピーするための適切な権限が必要です。HTTP_DOWNLOAD を使用する場合、VMware Identity Manager から ThinApp パッケージのネットワーク共有へのアクセスを構成するときに VMware Identity Manager コンソールに入力する共有ユーザー アカウントは、ThinApp パッケージのダウンロードに使用するアカウントです。共有ユーザー アカウントには、ネットワーク共有からファイルをコピーするために、ThinApp パッケージのネットワーク共有の読み取り権限が必要です。

ThinApp パッケージのネットワーク共有は、Windows エンドポイントに対して設定されている展開モードの適切な要件を満たしている必要があります。 VMware Identity Manager インストールと構成 を参照してください。