この事例では、ACME Enterprise という会社のデータセンター ACME_Datacenter に、2 つのクラスタがあり、複数の ESXi ホストが配置されています。エンジニアリング部門(ポート グループ PG-Engineering)と財務部門(ポート グループ PG-Finance)は Cluster1 に属しています。マーケティング部門(PG-Marketing)は Cluster2 に属しています。クラスタは両方とも、1 台の vCenter Server によって管理されています。

図 1. 論理スイッチを実装する前の ACME Enterprise 社のネットワーク
実装前

ACME 社の環境は、Cluster2 の使用率が低いのに対し、Cluster1 のコンピューティング容量の使用率が非常に高い状態です。ACME のネットワーク管理者は、管理者 John(ACME の仮想化管理者)に、エンジニアリング部門を Cluster2 に拡張し、両方のクラスタのエンジニアリングに属する仮想マシンが相互に通信できる方法はないかと尋ねました。これが実現すると ACME 社は、L2 レイヤーを拡張することによって両方のクラスタのコンピューティング キャパシティを活用することができます。

これを従来の方法で実現する場合、管理者 John は異なる VLAN を特殊な方法で接続し、2 つのクラスタが同じ L2 ドメインに含まれるようにする必要があります。この場合、ACME 社は新しい物理デバイスを購入してトラフィックを分離する必要があり、VLAN の過剰な設置、ネットワーク ループ、および運用管理上の負担が大きくなるなどの問題が発生する可能性があります。

管理者 John は、VMworld で見た論理ネットワークのデモを思い出し、NSX を試用することにしました。その結果、John は dvSwitch1 と dvSwitch2 間に論理スイッチを構築することによって、ACME 社の L2 レイヤーを拡張できることが分かりました。John は NSX Controller を利用して既存の IP ネットワーク上で NSX を機能させることができます。このとき、ACME 社の物理インフラストラクチャに手を加える必要がありません。
図 2. ACME Enterprise 社の論理スイッチの実装
実装後

管理者 John が 2 つのクラスタ間に 1 つの論理スイッチを構築すると、双方のクラスタを同じ論理スイッチに接続したままで、クラスタ間で仮想マシンの vMotion を実行できるようになりました。

図 3. 論理ネットワーク上の vMotion
実装後

管理者 John が ACME Enterprise 社で論理ネットワークを構築する手順を見ていきましょう。