トランスポート ゾーンまたは論理スイッチを作成するときに、レプリケーション モードを選択する必要があります。別のモードを理解すると、環境に最適なものを選択できます。
NSX 用に準備された各 ESXi ホストには、VXLAN トンネル エンドポイント (VTEP) が構成されます。各 VXLAN トンネル エンドポイントには IP アドレスがあります。これらの IP アドレスには、同じサブネットのアドレスを使用することも、別のサブネットのアドレスを使用することもできます。
- ユニキャスト レプリケーション モード
- マルチキャスト レプリケーション モード
- ハイブリッド レプリケーション モード
レプリケーション モードの概要
レプリケーション モード | 同じサブネット上にある VTEP への BUM レプリケーションの方法 | 異なるサブネット上にある VTEP への BUM レプリケーションの方法 | 物理ネットワークの要件 |
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ユニキャスト | ユニキャスト | ユニキャスト |
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マルチキャスト | レイヤー 2 マルチキャスト | レイヤー 3 マルチキャスト |
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ハイブリッド | レイヤー 2 マルチキャスト | ユニキャスト |
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ユニキャスト レプリケーション モード
ユニキャスト レプリケーション モードの場合、論理スイッチ内の BUM トラフィックを処理するレイヤー 2 またはレイヤー 3 マルチキャストを物理ネットワークでサポートする必要はありません。ユニキャスト モードを使用すると、物理ネットワークから論理ネットワークが完全に分離されます。ユニキャスト モードでは、すべての BUM トラフィックが送信元のホストのローカルに複製され、ユニキャスト パケットとして BUM トラフィックがリモート ホストに転送されます。ユニキャスト モードでは、1 つのサブネットにすべて VTEP を配置することも、複数のサブネットに分散することもできます。
1 つのサブネットの場合:すべてのホストの VTEP インターフェイスが 1 つのサブネットに属している場合、送信元の VTEP が各リモート VTEP に BUM トラフィックを転送します。これをヘッド エンド レプリケーションといいます。ヘッドエンド レプリケーションを行うと、ホストで不要なオーバーヘッドが発生し、使用するバンド幅も大きくなります。この影響は、サブネット内の BUM トラフィックの量、ホストの数、VTEP によって決まります。
複数のサブネットの場合:ホストの VTEP インターフェイスが複数の IP サブネットにグループ化されている場合は、送信元のホストが 2 つの部分で BUM トラフィックを処理します。送信元 VTEP は、同じサブネット内の各 VTEP に BUM トラフィックを転送します。これは 1 つのサブネットの場合と同じです。リモート サブネットの VTEP の場合、送信元 VTEP が各リモート VTEP サブネット内の 1 台のホストに BUM トラフィックを転送し、レプリケーション ビットを設定して、このパケットがローカル レプリケーション用であることを示します。リモート サブネット内のホストがこのパケットを受信し、レプリケーション ビットの設定を検出すると、このホストは、論理スイッチが存在するサブネット内の残りのすべての VTEP にパケットを送信します。
これにより、多くの VTEP IP サブネットが存在するネットワーク アーキテクチャでも、ユニキャスト レプリケーション モードが拡張され、複数のホスト間で負荷が分散されます。
マルチキャスト レプリケーション モード
マルチキャスト レプリケーション モードを使用するには、物理インフラストラクチャでレイヤー 3 とレイヤー 2 のマルチキャストが有効になっている必要があります。マルチキャスト モードを設定するには、ネットワーク管理者が各論理スイッチを IP マルチキャスト グループに関連付ける必要があります。特定の論理スイッチ上で仮想マシンをホストしている ESXi ホストの場合、関連する VTEP が IGMP を使用してマルチキャスト グループに参加します。ルーターは、IGMP の参加を追跡し、マルチキャスト ルーティング プロトコルを使用してマルチキャスト配布ツリーを作成します。
同じ IP サブネットの VTEP に BUM トラフィックを複製する場合、ホストはレイヤー 2 マルチキャストを使用します。異なる IP サブネットの VTEP に BUM トラフィックを複製する場合は、レイヤー 3 マルチキャストを使用します。いずれの場合も、リモート VTEP への BUM トラフィックのレプリケーションは、物理インフラストラクチャによって処理されます。
IP マルチキャストはよく知られているテクノロジーですが、データセンターでの IP マルチキャストの導入は、技術上、運用上または管理上の理由から、障壁と見なされることが少なくありません。ネットワーク管理者は、論理スイッチとマルチキャスト グループ間で 1 対 1 のマッピングが有効になるように、物理インフラストラクチャでのマルチキャストの状態に注意する必要があります。仮想化のメリットの 1 つは、変更された状態を物理インフラストラクチャに公開することなく、仮想インフラストラクチャを拡張できる点です。論理スイッチを物理的なマルチキャスト グループにマッピングすると、このモデルのメリットが失われます。
ハイブリッド レプリケーション モード
ハイブリッド モードでは、ユニキャストとマルチキャストのレプリケーション モードを両方を使用します。ハイブリッド レプリケーション モードでは、ホストの VTEP はレイヤー 2 マルチキャストを使用して、同じサブネットのピア VTEP に BUM トラフィックを分散します。ホストの VTEP は、異なるサブネットの VTEP に BUM トラフィックを複製する場合、VTEP サブネットあたり 1 台のホストにユニキャスト パケットとしてトラフィックを転送します。受信側のホストが、レイヤー 2 マルチキャストを使用して、サブネット内の他の VTEP にパケットを送信します。
ユーザーのネットワークでは、レイヤー 3 マルチキャストよりもレイヤー 2 マルチキャストのほうが導入しやすいため、一般的です。同じサブネット内の異なる VTEP へのレプリケーションは物理ネットワークで処理されます。同じサブネットに多くのピア VTEP がある場合、ハイブリッド レプリケーションを使用すると、BUM トラフィックの送信元のホストの処理が大幅に改善されます。ハイブリッド レプリケーションでは、セグメンテーションがほとんどない過密な環境でも拡張が可能になります。