NSX Edge は、ISO、OVA/OVF、または PXE を起動してインストールできます。いずれのインストール方法でも、NSX Edge をインストールする前にホスト ネットワークの準備ができていることを確認します。

トランスポート ゾーンにおける NSX Edge の概要図

NSX の概要図には、トランスポート ゾーンに 2 台のトランスポート ノードがあります。1 台のトランスポート ノードはホストです。もう 1 台は NSX Edge です。

図 1. NSX Edge の概要

展開直後の NSX Edge は、空のコンテナと考えることができます。論理ルーターを作成するまで、NSX Edge は何も行いません。NSX Edge は、Tier-0 と Tier-1 の論理ルーターの処理をバッキングします。各論理ルーターにはサービス ルーター (SR) と分散ルーター (DR) が含まれます。ルーターの分散とは、同じトランスポート ゾーンに属するすべてのトランスポート ノードにルーターを複製することです。この図では、ホスト トランスポート ノードに、Tier-0 および Tier-1 と同じ分散ルーターが含まれています。サービス ルーターは、NAT などのサービスを実行するように論理ルーターを構成する場合に必要です。Tier-0 の論理ルーターにはすべてサービス ルーターがあります。Tier-1 のルーターには、設計上の検討事項に基づいて必要な場合にサービス ルーターを設定できます。

デフォルトでは、サービス ルーターと分散ルーター間のリンクは 169.254.0.0/28 サブネットを使用します。これらのルーター内の中継リンクは、Tier-0 または Tier-1 の論理ルーターの展開時に自動的に作成されます。環境内で 169.254.0.0/28 サブネットが使用中ではない限り、リンクを構成あるいは変更する必要はありません。Tier-1 の論理ルーターでは、この論理ルーターの作成時に NSX Edge クラスタを選択した場合にのみ SR があります。

Tier-0 から Tier-1 の接続に割り当てられるデフォルトのアドレス空間は 100.64.0.0/10 です。Tier-0 から Tier-1 の各ピア接続には、100.64.0.0/10 アドレス空間内で /31 サブネットが提供されます。このリンクは、Tier-1 ルーターを作成し、Tier-0 ルーターに接続するときに自動的に作成されます。環境内で 100.64.0.0/10 サブネットが使用中ではない限り、このリンクのインターフェイスを構成または変更する必要はありません。

NSX 環境には、それぞれ管理プレーン クラスタ (MP) と制御プレーン クラスタ (CCP) があります。管理プレーン クラスタと制御プレーン クラスタは、各トランスポート ゾーンのローカル制御プレーン (LCP) に構成をプッシュします。ホストまたは NSX Edge が管理プレーンに加わると、管理プレーン エージェント (MPA) がホストまたは NSX Edge と接続を確立し、ホストまたは NSX EdgeNSX のファブリック ノードになります。その後、ファブリック ノードがトランスポート ノードとして追加されると、ホストまたは NSX Edge との LCP 接続が確立されます。

この図は、高可用性を提供するために結合された 2 つの物理 NIC(pNIC1 と pNIC2)の例を示しています。物理 NIC はデータパスで管理されます。これらは、外部ネットワークへの VLAN アップリンクとして、または内部の NSX で管理された仮想マシン ネットワークへのトンネル エンドポイントとして機能します。

ベスト プラクティスは、仮想マシンとして展開されている各 NSX Edge に 2 つ以上の物理リンクを割り当てることです。任意で、同じ pNIC のポート グループを、異なる VLAN ID を使用して重複させることができます。最初に見つかったネットワーク リンクが管理に使用されます。たとえば、NSX Edge 仮想マシンでは、vnic1 が最初に見つかったリンクだとします。ベア メタル インストールでは、eth0 または em0 が最初に見つかる場合があります。残りのリンクは、アップリンクやトンネルに使用されます。たとえば、1 つは、NSX によって管理されている仮想マシンのトンネル エンドポイントとして使用できます。もう 1 つは NSX Edge から外部 ToR へのアップリンクに使用できます。

管理者として CLI にログインし、コマンド get interfaces および get physical-ports を実行することによって、NSX Edge の物理リンク情報を表示できます。API では、GET /api/v1/transport-nodes/{transport-node-id}/node/network/interfaces API 呼び出しを使用できます。物理リンクの詳細については、次のセクションを参照してください。

NSX Edge を仮想マシン アプライアンスとしてインストールするか、ベア メタルにインストールするかにかかわらず、ネットワーク構成には複数のオプションがあります。
図 2. ESXi 内の仮想マシン フォーム ファクタの NSX Edge トランスポート ノード
図 3. ベア メタル Edge トランスポート ノード

トランスポート ゾーンと N-VDS

NSX Edge のネットワークを理解するには、トランスポート ゾーンと N-VDS についての知識が必要です。トランスポート ゾーンは NSX におけるレイヤー 2 ネットワークの到達範囲を制御します。N-VDS は、トランスポート ノードに作成されるソフトウェア スイッチです。N-VDS は、論理ルーターのアップリンクとダウンリンクを物理 NIC にバインドします。NSX Edge が属するトランスポート ゾーンごとに、NSX Edge に個別の N-VDS がインストールされます。

トランスポート ゾーンには次の 2 種類があります。
  • トランスポート ノード間の内部 NSX トンネル用のオーバーレイ
  • NSX 外部のアップリンク用 VLAN

NSX Edge は 0 個の VLAN トランスポート ゾーンまたは多数のトランスポート ゾーンに属することができます。VLAN トランスポート ゾーンが 0 個の場合も、NSX Edge でアップリンクを使用できます。NSX Edge のアップリンクは、オーバーレイ トランスポート ゾーン用にインストールされている N-VDS を使用できるためです。各 NSX Edge に N-VDS を 1 つだけ設定する場合は、このようにできます。別の設計オプションとして、NSX Edge をアップリンクごとに 1 つずつ、複数の VLAN トランスポート ゾーンに加えることができます。

最も一般的な設計オプションは、3 つのトランスポート ゾーンです。1 つのオーバーレイと、冗長アップリンク用に 2 つの VLAN トランスポート ゾーンを設定します。

トランスポート ネットワークでオーバーレイ トラフィックに同じ VLAN ID を使用し、VLAN トラフィック(VLAN アップリンクなど)に別の VLAN ID を使用するには、2 つの異なる N-VDS(VLAN 用とオーバーレイ用)に ID を構成します。

仮想アプライアンス/仮想マシンの NSX Edge ネットワーク

NSX Edge を仮想アプライアンスまたは仮想マシンとしてインストールすると、fp-ethX という内部インターフェイスが作成されます。ここで X は 0、1、2、3 です。これらのインターフェイスは、トップオブラック (ToR) スイッチへのアップリンク用と、NSX のオーバーレイ トンネル用に割り当てられます。

NSX Edge のトランスポート ノードを作成するときに、アップリンクとオーバーレイ トンネルに関連付ける fp-ethX インターフェイスを選択できます。fp-ethX インターフェイスの使用方法は任意に決められます。

vSphere Distributed Switch または vSphere Standard スイッチで、NSX Edge に 2 つ以上の vmnics を割り当てる必要があります。1 つは NSX Edge の管理用で、もう 1 つはアップリンクやトンネル用です。

次の物理トポロジ例では、fp-eth0 を NSX のオーバーレイ トンネルに使用しています。fp-eth1 は VLAN アップリンクに使用しています。fp-eth2 と fp-eth3 は使用されていません。vNIC1 は、管理ネットワークに割り当てられます。

図 4. NSX Edge 仮想マシン ネットワークのリンク設定の例

この例に示す NSX Edge は 2 つのトランスポート ゾーンに属しています(オーバーレイ 1 つと VLAN 1 つ)。このため、トンネル用とアップリンク トラフィック用に 2 つの N-VDS があります。

このスクリーン ショットは、仮想マシンのポート グループ、nsx-tunnel と vlan-uplink を示しています。

図 5. vSphere の Edge ネットワーク
展開時には、仮想マシンのポート グループで構成されている名前と一致するネットワーク名を指定する必要があります。たとえば、 NSX Edge の展開に ovftool を使用している場合に、この例の仮想マシン ポート グループと一致させるには、ネットワークの ovftool 設定を次のように行うことができます。
--net:"Network 0-Mgmt" --net:"Network 1-nsx-tunnel" --net:"Network 2=vlan-uplink"

この例では、仮想マシンのポート グループ名、Mgmt、nsx-tunnel、vlan-uplink を使用しています。仮想マシンのポート グループには任意の名前を使用できます。

NSX Edge でトンネルとアップリンク用に構成する仮想マシン ポート グループを、VMkernel ポートや、特定の IP アドレスに関連付ける必要はありません。これらは、レイヤー 2 でのみ使用されるためです。環境で DHCP を使用して管理インターフェイスにアドレスを提供する場合は、管理ネットワークに割り当てられている NIC が 1 つだけであることを確認します。

VLAN とトンネルのポート グループはトランク ポートとして構成されています。これは必須です。たとえば、標準の vSwitch では、トランク ポートを次のように構成します。[ホスト] > [構成] > [ネットワーク] > [ネットワークの追加] > [仮想マシン] > [VLAN ID All (4095)]

アプライアンス ベースまたは仮想マシンの NSX Edge を使用する場合は、標準の vSwitch または vSphere Distributed Switch を使用できます。

準備が完了した NSX ホストに NSX Edge 仮想マシンをインストールして、トランスポート ノードとして構成することができます。展開には 2 つのタイプがあります。

  • NSX Edge 仮想マシンを展開するには、VSS/VDS がホスト上の個別の pNIC を使用する VSS/VDS ポート グループを使用します。ホスト トランスポート ノードは、ホストにインストールされた N-VDS に対して独立した pNIC を使用します。ホスト トランスポート ノードの N-VDS は、VSS または VDS と共存します。いずれも、独立した pNIC を使用します。ホスト TEP (Tunnel End Point) および NSX Edge TEP は同じサブネットに配置することも、異なるサブネットに配置することもできます。
  • NSX Edge 仮想マシンを展開するには、ホスト トランスポート ノードの N-VDS 上の VLAN によってバッキングされている論理スイッチを使用します。ホスト TEP と NSX Edge TEP は、同じ VLAN またはサブネットに配置できます。

また、複数の NSX Edge アプライアンス/仮想マシンを 1 台のホストにインストールし、同じ管理、VLAN、トンネル エンドポイントのポート グループを、インストールされているすべての NSX Edge に使用できます。

基盤となる物理リンクが稼動し、仮想マシンのポート グループ構成が完了したら、NSX Edge をインストールできます。

注: NSX Edge 仮想マシン アップリンク(管理、Fastpath インターフェイス)が VLAN ベースのポートグループに接続する場合、基盤となる ESXi ホストを NSX トランスポート ノードにする必要はありません。ただし、 NSX Edge 仮想マシン アップリンクが NSX VLAN セグメント(論理スイッチ)に接続する場合は、Edge をホストする ESXi ホストをトランスポート ノードとして構成する必要があります。

ベア メタルの NSX Edge ネットワーク

ベアメタルの NSX Edge には、fp-ethX という内部インターフェイスが含まれます。この X は、最大 16 個のインターフェイスを示します。作成される fp-ethX インターフェイス数は、ベア メタルの NSX Edge にある物理 NIC の数によって異なります。これらのインターフェイスの 4 つまでは、トップオブラック (ToR) スイッチへのアップリンクや、NSX のオーバーレイ トンネルに割り当てることができます。

NSX Edge のトランスポート ノードを作成するときに、アップリンクとオーバーレイ トンネルに関連付ける fp-ethX インターフェイスを選択できます。

fp-ethX インターフェイスの使用方法は任意に決められます。次の物理トポロジ例では、fp-eth0 と fp-eth1 が結合され、NSX のオーバーレイ トンネルに使用されています。fp-eth2 と fp-eth3 は、ToR への冗長 VLAN アップリンクとして使用されています。

図 6. ベア メタルの NSX Edge ネットワークのリンク設定の一例

NSX Edge のアップリンクの冗長性

NSX Edge のアップリンクの冗長性によって、2 つの VLAN 等コスト マルチパス (ECMP) アップリンクを NSX Edge から外部 ToR のネットワーク接続に使用できます。

ECMP VLAN アップリンクが 2 つあるときは、高可用性と完全なメッシュ接続用に ToR スイッチも 2 つ用意する必要があります。VLAN 論理スイッチには、それぞれ対応する VLAN ID があります。

NSX Edge を VLAN のトランスポート ゾーンに追加すると、新しい N-VDS がインストールされます。たとえば、図に示すように 4 つの VLAN トランスポート ゾーンに NSX Edge ノードを追加すると、NSX Edge に 4 つの N-VDS がインストールされます。

図 7. NSX Edge から ToR への ECMP VLAN 設定の一例
注: vSphere Distributed Switch (vDS) が含まれ、N-VDS が含まれない ESXi ホスト上で展開されている Edge 仮想マシンの場合は、次の操作が必要です。
  • 6.6 より前のバージョンを実行している vDS スイッチの場合、VLAN 接続を提供する NSX Edge 仮想マシンの仮想 NIC に接続するポートで無作為検出モードを有効にします。
  • 6.6 以降のバージョンを実行している vDS スイッチの場合、MAC ラーニング機能を有効にし、無作為検出モードを無効にします。この設定により、宛先の MAC アドレスが仮想 NIC の有効な MAC アドレスと一致しない場合、パケットが宛先に送信されます。
  • vDS スイッチで偽装転送を有効にします。偽装転送により、送信元の MAC アドレスが仮想 NIC のソース MAC アドレスと一致しないパケットを送信できます。VLAN ネットワークのブリッジ、または L2VPN と DHCP の機能をサポートするには、これらの設定が必要です。