デフォルトでは、Orchestrator は動的ルートの学習にアクティブに関与しています。VMware SD-WAN Edge と Gateway は、Orchestrator を使用して初期ルート設定を計算し、その結果を Edge および Gateway に戻します。分散コスト計算機能を使用すると、ルートのコスト計算を Edge および Gateway に分散できます。分散コスト計算などのカスタマー設定を設定できるのは、オペレータ ユーザーのみです。

注:

Orchestrator ベースのルート計算で問題が発生しているユーザーは、[分散コスト計算 (Distributed Cost Calculation)] を有効にする必要があります。

このデフォルトの方法では、Orchestrator を動的ルート計算と Edge および Gateway へのルートの配布の両方に関与させますが、これには次の欠点があります。

  • Orchestrator が高負荷になると、ルートのコンバージェンス時間は非常に長くなります(たとえば、2000 以上のルートの場合は 40 秒にもなります)。これは、Orchestrator が同期されたすべてのルートの設定を計算し、それらの設定を Edge および Gateway に返すのに時間がかかるためです。
  • Orchestrator をルート計算に使用すると、Orchestrator に到達できない間に学習した新しい動的ルートは、Orchestrator が再び到達可能になるまで広報されません。

カスタマー エンタープライズが分散コスト計算を使用している場合、Orchestrator はルート設定の計算にアクティブに関与しなくなります。代わりに、ルートが学習されるとすぐに Edge と Gateway によって適切な順序で挿入され、Orchestrator にそれらの設定が伝達されます。

Edge と Gateway の分散コスト計算を有効にした場合、この機能には次のメリットがあります。

  • Orchestrator に到達できない場合のルート学習への影響を最小限に抑えます。
  • 数千もの動的ルートを持つ大規模なネットワークでは、ルートのコンバージェンス時間が数分から数秒に短縮されます。
  • ネットワークの遅延が大幅に短縮されます。
  • 瞬時のデータ プレーン コンバージェンスを提供します。
  • オーバーレイ フロー制御でのルートの強化された順序変更と固定をサポートします。
  • [オーバーレイ フロー制御 (Overlay Flow Control)] ページでルートを更新するオプションを提供します。オーバーレイ フロー制御ポリシーに変更がある場合は常に、[ルートの更新 (Refresh Routes)] オプションを使用すると、Edge または Gateway を再起動することなく、既存のルートに変更がただちに適用されます。

分散コスト計算を有効にすると、カスタマー エンタープライズ ネットワークに次のような影響を与えます。

  • すべてのローカルの動的ルートが更新され、これらのルートの設定および広報アクションが更新されます。この更新された情報は、Gateway、Orchestrator、および最終的にエンタープライズ全体に広報されます。カスタマーのネットワークはルート テーブルを完全に再構築する必要があります。ほとんどのカスタマー環境では、再構築にかかる時間は 5 秒未満です。大規模なカスタマー環境(100,000 以上のルートなど)では、最大で 2 分かかることがあります。ルート テーブルの再構築中に、すべてのサイトのカスタマー トラフィックが影響を受けます。
  • これらのルートを使用している既存のフローは、ルーティング エントリの変更の影響を受ける可能性があります。
注: カスタマー エンタープライズへの影響を最小限に抑えるため、分散コスト計算はメンテナンス ウィンドウで有効にすることをお勧めします。

カスタマーの分散コスト計算を設定するには、次の手順を実行します。

前提条件

分散コスト計算機能を有効にする前に、以下を確認してください。

  • すべての Edge と Gateway は、ソフトウェア バージョン 3.4.0 以降を使用する必要があります。
  • オペレータ プロファイルに関連付けられたソフトウェア イメージは、バージョン 3.4.0 以降を使用する必要があります。

手順

  1. オペレータ ポータルで、[カスタマーの管理 (Manage Customers)] に移動します。
  2. カスタマーを選択し、[カスタマーのシステム設定の編集 (Edit Customer System Settings)] をクリックするか、カスタマーへのリンクをクリックします。
  3. エンタープライズ ポータルで、[グローバル設定 (Global Settings)] > [カスタマー設定 (Customer Configuration)] の順に移動します。
    1. [カスタマー設定 (Customer Configuration)] ページで、[追加の設定 (Additional Configuration)] > [SD-WAN 設定 (SD-WAN Settings)] > [OFC のコスト計算 (OFC Cost Calculation)] セクションに移動し、次のように設定します。
      • [分散コスト計算 (Distributed Cost Calculation)] チェックボックスを選択して、ルートのコスト計算を Edge と Gateway に委任します。
      • [NSD ポリシーの使用 (Use NSD Policy)] チェックボックスをオンにして、Edge と Gateway のルートのコスト計算に Non SD-WAN Destination ポリシーを使用します。このオプションは、ソフトウェア バージョン 4.3.0 以降を実行している Edge と Gateway でのみ使用できます。
    2. [変更の保存 (Save Changes)] をクリックします。
      注: [分散コスト計算 (Distributed Cost Calculation)] を有効にした後に、エンタープライズ ポータルの [SD-WAN] サービスで [オーバーレイ フロー制御 (Overlay Flow Control)] ページのルートを更新することをお勧めします。
      注: エンタープライズで [分散コスト計算 (Distributed Cost Calculation)] が有効になっていて、ユーザーが [オペレータ プロファイル (Operator Profile)] ページでソフトウェア アップデートを無効にしようとする場合は、将来、エンタープライズ内の Edge が 3.4.0 より前のソフトウェア イメージ バージョンにダウングレードされないようにする必要があります。エンタープライズ内の 1 台以上の Edge が 3.4.0 より前のソフトウェア イメージ バージョンを使用している場合、エンタープライズ トラフィックは最適でないパスを選択する可能性があります。最適でないパスは、Edge が 3.4.0 以降のバージョンにアップグレードされている場合にのみ修正されます。
      以下に、ソフトウェア バージョンが変更される可能性があり、Edge がソフトウェア イメージ バージョン 3.4.0 以降を使用していることを確認する必要があるいくつかのシナリオを示します。
      • 工場出荷時設定にリセット - Edge が工場出荷時設定にリセットされると、Edge のソフトウェア バージョンが工場出荷時のイメージ バージョンにリストアされます。これは 3.4.0 より前のバージョンになる可能性があります。
      • Edge のアクティベーション - Edge がアクティベーションされると、3.4.0 より前のソフトウェア バージョンで起動することがあります。

    結果

    [分散コスト計算 (Distributed Cost Calculation)] を有効にすると、すべての動的ルートに分散コスト計算に基づく新しい設定と広報アクションが割り当てられ、新しい情報がエンタープライズ ネットワーク全体に伝達されます。

    Orchestrator はルート設定の計算にアクティブに関与しなくなります。代わりに、ルートが学習されるとすぐに Edge と Gateway によって適切な順序で挿入され、Orchestrator にそれらの設定が伝達されます。

    オーバーレイ フロー制御ポリシーは、制御プレーンの設定の更新で Edge と Gateway に送信されます。Edge と Gateway は、計算されたコストと広報アクションを使用してルートを Orchestrator に送信します。Edge と Gateway は、コストとルート属性に基づいてルートの順序を処理します。

    ネットワークにあるすべてのルートのサマリを表示するには、エンタープライズ ポータルの [SD-WAN][設定 (Configure)] > [オーバーレイ フロー制御 (Overlay Flow Control)] をクリックします。ルートと広報アクションは [オーバーレイ フロー制御 (Overlay Flow Control)] ページで確認できます。詳細については、『VMware 管理ガイド』のトピック「オーバーレイ フロー制御」を参照してください。