vSAN では独自の用語と定義が使用されており、これらを理解することが重要です。

vSAN の使用を開始する前に、vSAN の重要な用語および定義を確認してください。

ディスク グループ

ディスク グループは、ホストおよび物理デバイス グループでの物理ストレージ容量の単位で、これにより、vSAN クラスタのパフォーマンスと容量が決まります。 搭載しているローカル デバイスを vSAN クラスタに提供する各 ESXi ホストでは、デバイスがディスク グループに編成されます。

各ディスク グループには、1 つのフラッシュ キャッシュ デバイスと 1 つ以上のキャパシティ デバイスが含まれている必要があります。 キャッシュで使用されるデバイスは、ディスク グループ間で共有したり、その他の目的で使用したりすることができません。 1 つのキャッシュ デバイスは、1 つのディスク グループ専用にする必要があります。 ハイブリッドのクラスタでは、キャッシュ レイヤーにフラッシュ デバイスが使用され、ストレージ容量レイヤーに磁気ディスクが使用されます。 オールフラッシュ クラスタでは、キャッシュとキャパシティの両方でフラッシュ デバイスが使用されます。 ディスク グループの作成および管理の詳細については、vSAN クラスタでのデバイス管理を参照してください。

消費される容量

消費される容量とは、1 つ以上の仮想マシンによって任意の時点で消費される総物理容量です。 消費される容量は、VMDK の消費サイズ、保護レプリカなどの多くの要因によって決定されます。キャッシュ サイジングの計算時には、保護レプリカで使用される容量は考慮しません。

オブジェクトベースのストレージ

vSAN はオブジェクトと呼ばれるフレキシブルなデータ コンテナの形でデータを格納および管理します。オブジェクトは、含まれるデータおよびメタデータがクラスタ全体に分散されている論理ボリュームです。 たとえば、すべての VMDK は、すべてのスナップショットと同様、1 つのオブジェクトです。 vSAN データストアで仮想マシンをプロビジョニングする場合、vSAN では、仮想ディスクごとに複数のコンポーネントで構成されるオブジェクトのセットを作成します。また、仮想マシンのすべてのメタデータ ファイルを保存するコンテナ オブジェクトである VM ホーム ネームスペースも作成します。 割り当てられた仮想マシン ストレージ ポリシーに基づき、vSAN では、各オブジェクトを個別にプロビジョニングおよび管理します。これには、すべてのオブジェクトで RAID 構成を作成する作業が関係することもあります。

vSAN は仮想ディスクにオブジェクトを作成し、クラスタにオブジェクトを分散する方法を決定するときに、次の要因を考慮します。

  • vSAN は、仮想ディスク要件が指定された仮想マシン ストレージ ポリシー設定に基づいて適用されていることを確認します。

  • vSAN はプロビジョニングの時点で、正しいクラスタ リソースが使用されることを確認します。たとえば vSAN では、保護ポリシーに基づいて作成するレプリカの数を決定します。パフォーマンス ポリシーにより、各レプリカに割り当てられるフラッシュ読み取りキャッシュの量、各レプリカで作成されるストライプの数、およびそれらを配置するクラスタ内の場所が決まります。

  • vSAN は、仮想ディスクのポリシーのコンプライアンス ステータスを継続的に監視してレポートします。非準拠のポリシー ステータスを見つけた場合は、原因となっている問題のトラブルシューティングを行って解決する必要があります。

    注:

    必要に応じて、仮想マシン ストレージ ポリシーの設定を編集することができます。 ストレージ ポリシーの設定を変更しても、仮想マシンへのアクセスに影響はありません。 vSAN は、再構成に使用されるストレージとネットワーク リソースを動的に調整して、オブジェクトの再構成が通常のワークロードに与える影響を最小にします。仮想マシン ストレージ ポリシーの設定を変更すると、vSAN は、オブジェクトの再作成プロセスとその後の再同期を開始する可能性があります。vSAN クラスタの再同期についてを参照してください。

  • vSAN は、ミラーや監視などの必要な保護コンポーネントが、別々のホストやフォールト ドメインに配置されることを確認します。たとえば、障害時にコンポーネントを再構築するため、vSAN は配置ルールに適合する ESXi ホストを探します。その配置ルールでは、仮想マシン オブジェクトの保護コンポーネントが、2 台の別々のホストに配置されるか、またはいくつかのフォールト ドメインにわたって配置される必要があります。

vSAN データストア

クラスタで vSAN を有効にすると、単一の vSAN データストアが作成されます。これは、仮想ボリューム、VMFS、および NFS など、使用可能なデータストアのリストに別のタイプのデータストアとして表示されます。 1 つの vSAN データストアにより、仮想マシンや仮想ディスクごとに異なるレベルのサービス レベルを提供できます。vCenter Server® では、vSAN データストアのストレージ特性が一連の機能として表示されます。これらの機能は、仮想マシンのストレージ ポリシーを定義するときに参照できます。 仮想マシンを後でデプロイする場合、vSAN はこのポリシーを使用して、各仮想マシンの要件に基づいて最適な方法で仮想マシンを配置します。ストレージ ポリシーの使用に関する概要については、『vSphere ストレージ』ドキュメントを参照してください。

vSAN データストアでは、特定の特性について考慮する必要があります。

  • vSAN は、クラスタにストレージが提供されるかどうかに関係なく、クラスタ内のすべてのホストからアクセスできる単一の vSAN データストアを提供します。各ホストには、仮想ボリューム、VMFS、または NFS などの他の任意のデータストアをマウントすることもできます。

  • Storage vMotion を使用することにより、vSAN データストア間、NFS データストア間および VMFS データストア間で仮想マシンを移動できます。

  • キャパシティ デバイスとして使用される磁気ディスクとフラッシュ デバイスだけが、データストアの容量に反映できます。 フラッシュ キャッシュとして使用されるデバイスは、データストアの一部としてカウントされません。

オブジェクトとコンポーネント

各オブジェクトは、一連のコンポーネントで構成され、仮想マシン ストレージ ポリシーで使用中の機能によって決まります。 たとえば、許容されるプライマリ レベルの障害数 が 1 に設定されている場合、vSAN は、レプリカおよび監視などの保護コンポーネントが確実に vSAN クラスタの別個のホストに配置されるようにします。この場合の各レプリカは、オブジェクト コンポーネントです。また、同じポリシーで オブジェクトあたりのディスク ストライプの数 が 2 以上に構成されている場合、vSAN は複数のキャパシティ デバイスにわたってオブジェクトのストライピングも行い、各ストライプを指定したオブジェクトのコンポーネントとみなします。必要な場合、vSAN では、大きなオブジェクトを複数のコンポーネントに分割することもあります。

vSAN データストアには、次のオブジェクト タイプが含まれています。

VM ホームのネームスペース

.vmx、ログ ファイル、vmdk ファイル、スナップショット差分記述ファイルなどの仮想マシンの構成ファイルすべてが保存されている、仮想マシンのホーム ディレクトリ。

VMDK

仮想マシンのハード ディスク ドライブの内容を保存する、仮想マシンのディスク ファイル(.vmdk ファイル)。

仮想マシン スワップ オブジェクト

仮想マシンのパワーオン時に作成されます。

スナップショット差分 VMDK

仮想マシンのスナップショットの作成時に作成されます。

メモリ オブジェクト

仮想マシンの作成またはサスペンド中、スナップショット メモリ オプションが選択されるときに作成されます。

仮想マシンのコンプライアンス ステータス:準拠および非準拠

仮想マシンは、そのオブジェクトの 1 つ以上が割り当てられているストレージ ポリシーの要件を満たしていない場合に、非準拠とみなされます。 たとえば、ミラー コピーのいずれかにアクセスできない場合、ステータスは非準拠になります。 仮想マシンがストレージ ポリシーで定義されている要件に準拠している場合、その仮想マシンのステータスは準拠です。 仮想ディスク ページの 物理ディスクの配置 タブから、仮想マシン オブジェクトのコンプライアンス ステータスを確認できます。 vSAN クラスタのトラブルシューティングの詳細については、vSAN での障害の処理を参照してください。

コンポーネントの状態:[低下しました] 状態と [不完全] 状態

vSAN は、コンポーネントの次の障害状態について確認応答します。

  • [低下しました]。 vSAN で永続的なコンポーネント障害が検出され、その障害コンポーネントが元の正常動作の状態に戻らないと判断される場合、コンポーネントは [低下しました] になります。その結果、vSAN は低下したコンポーネントの再構築をすぐに開始します。この状態は、障害の発生したデバイスにコンポーネントが存在する場合に発生することがあります。

  • [不完全]。 vSAN で一時的なコンポーネント障害が検出され、そのすべてのデータを含むコンポーネントがリカバリして vSAN が元の動作状態に戻るとみなされる場合、コンポーネントは [不完全] になります。この状態は、ホストを再起動するとき、または vSAN ホストからデバイスを切り離す場合に発生する可能性があります。vSAN は、60 分待ってから、[不完全] ステータスのコンポーネントの再構築を開始します。

オブジェクトの状態:[健全] および [非健全]

クラスタでの障害のタイプと数に応じて、オブジェクトの状態は次のいずれかになります。

  • [健全]。 少なくとも 1 つの完全な RAID 1 ミラーを使用できる場合、または最低限必要な数のデータ セグメントを使用できる場合、オブジェクトは健全であるとみなされます。

  • [非健全]。 オブジェクトはフル ミラーが利用不能か、最小限必要なデータ セグメントを RAID 5 または RAID 6 のオブジェクトに使用できないときに、非健全とみなされます。使用可能なオブジェクトの投票が 50% に満たない場合は、オブジェクトは非健全です。クラスタで複数の障害が発生し、オブジェクトが非健全になることがあります。オブジェクトの動作ステータスが非健全とみなされる場合は、関連する仮想マシンの可用性が影響を受けます。

監視

監視は、メタデータのみを含み、実際のアプリケーション データを何も含まないコンポーネントです。 潜在的な障害の後、存続しているデータストアのコンポーネントの可用性に関して決定を下す必要がある場合のタイブレーカとして機能します。監視では、オンディスク フォーマット 1.0 を使用する場合には vSAN データストアでおよそ 2 MB のメタデータ用容量を使用し、バージョン 2.0 以降のオンディスク フォーマットでは 4 MB の容量を使用します。

vSAN 6.0 以降は、各コンポーネントがオブジェクトの可用性を判別するために複数回の投票を行う非対称の投票システムを使用してクォーラムを維持します。オブジェクトが使用可能とみなされるには、仮想マシンのストレージ オブジェクトを構成する投票の中で、いつでもアクセスできるもの割合が 50% を超えている必要があります。すべてのホストからアクセスできる投票の割合が 50% 以下になると、そのオブジェクトは vSAN データストアで使用できなくなります。アクセス不能なオブジェクトは、関連付けられた仮想マシンの可用性に影響を与えることがあります。

ストレージ ポリシーベース管理 (SPBM)

vSAN を使用する場合、パフォーマンスや可用性などの仮想マシンのストレージ要件を、ポリシーという形で定義できます。vSAN を使用すると、vSAN データストアにデプロイされる仮想マシンに、少なくとも 1 つの仮想マシン ストレージ ポリシーが割り当てられるようになります。仮想マシンのストレージ要件が分かっている場合は、ストレージ ポリシーを定義し、仮想マシンに割り当てることができます。 仮想マシンのデプロイ時にストレージ ポリシーを適用しない場合、vSAN はデフォルトの vSAN ポリシーを自動的に割り当てます。デフォルトの vSAN ポリシーでは、許容されるプライマリ レベルの障害数 が 1 で、各オブジェクトに単一のディスク ストライプが設定され、シン プロビジョニングされた仮想ディスクが使用されます。最適の結果を得るには、ポリシーの要件がデフォルトのストレージ ポリシーで定義されている要件と同じ場合でも、独自の仮想マシン ストレージ ポリシーを定義します。vSAN ストレージ ポリシーの使用方法の詳細については、vSAN ポリシーの使用を参照してください。

Ruby vSphere Console (RVC)

Ruby vSphere Console (RVC) は、vSAN クラスタの管理およびトラブルシューティングに使用するコマンドライン インターフェイスです。RVC により、esxcli によって出力されるホスト中心のビューではなく、クラスタ全体のビューを表示できます。 RVC は Windows 用の vCenter Server Appliance および vCenter Server にバンドルされているため、個別にインストールする必要はありません。 RVC コマンドの詳細については、『RVC コマンド リファレンス ガイド』を参照してください。

vSphere PowerCLI

VMware vSphere PowerCLI によって、vSAN にコマンドライン スクリプトのサポートが追加されるため、構成および管理タスクの自動化に役立ちます。vSphere PowerCLI は、vSphere API に Windows PowerShell インターフェイスを提供します。PowerCLI には、vSAN コンポーネントを管理するためのコマンドレットが含まれています。vSphere PowerCLI の使用の詳細については、「vSphere PowerCLI ドキュメント」を参照してください。

vSAN Observer

VMware vSAN Observer は、RVC で実行される Web ベース ツールで、vSAN クラスタの詳細パフォーマンス分析と監視に使用されます。vSAN Observer を使用して、キャパシティ レイヤーのパフォーマンス統計、物理ディスク グループの統計情報、CPU の現在の負荷、vSAN メモリ プールの使用量、vSAN クラスタ全体の物理およびインメモリ オブジェクトの分散を表示します。

RVC と vSAN Observer の構成、起動、および使用方法の詳細については、『vSAN Troubleshooting Reference Manual』を参照してください。