vSAN は、vSphere Update Manager で使用するためのシステムのベースラインおよびベースライン グループを生成します。この推奨ベースラインは、vSAN クラスタ内のホストのソフトウェア、パッチ、およびエクステンションの更新に使用できます。

vSAN 6.6.1 以降では、vSAN クラスタに対するビルドの推奨事項が自動生成されます。vSAN は、『VMware 互換性ガイド』および vSAN リリース カタログの情報とインストールされている ESXi リリースの情報を組み合わせます。これらの推奨更新は、ハードウェアのサポート状態を維持するために使用できる最適なリリースを提示します。

vSAN 6.7.1 以降のシステム ベースラインには、デバイス ドライバとファームウェア アップデートも含めることができます。これらのアップデートは、クラスタに推奨される ESXi ソフトウェアをサポートします。

vSAN 6.7.3 以降では、現在の ESXi リリースのみ、またはサポートされる最新の ESXi リリースについて、ビルドの推奨事項を生成するように Update Manager を構成できます。現在のリリースに対するビルドの推奨事項には、このリリースのすべてのパッチとドライバ アップデートが含まれています。

vSAN のシステム ベースライン

vSAN ビルドの推奨事項は、Update Manager の vSAN システム ベースラインを介して提供されます。このシステム ベースラインは、vSAN によって管理されます。システム ベースラインは読み取り専用で、カスタマイズできません。

vSAN では、vSAN クラスタごとに 1 つのベースライン グループが生成されます。vSAN システム ベースラインは、[ベースラインおよびグループ] タブの [ベースライン] ペインに表示されます。ユーザーは引き続き独自のベースラインを作成して修正できます。

vSAN システム ベースラインには、認定ベンダーによって提供されるカスタム ISO イメージを含めることができます。vSAN クラスタ内のホストに OEM 固有のカスタム ISO がある場合、vSAN 推奨システム ベースラインには、同じベンダーによって提供されるカスタム ISO を含めることができます。Update Manager では、vSAN でサポートされていないカスタム ISO の推奨事項を生成できません。ホストのイメージ プロファイルでベンダー名をオーバーライドするカスタマイズされたソフトウェア イメージを実行している場合、Update Manager では推奨システム ベースラインを生成できません。

Update Manager は、各 vSAN クラスタを自動的にスキャンして、ベースライン グループに対するコンプライアンスを確認します。クラスタをアップグレードするには、Update Manager を使用してシステム ベースラインを手動で修正する必要があります。vSAN システム ベースラインは、1 台のホストまたはクラスタ全体に対して修正できます。

vSAN リリース カタログ

vSAN リリース カタログでは、使用可能なリリース、リリースの優先順位、各リリースに必要な重要パッチに関する情報が維持されます。vSAN リリース カタログは、VMware クラウドでホストされます。

vSAN では、リリース カタログにアクセスするためにインターネット接続が必要です。vSAN でリリース カタログにアクセスするためにカスタマ エクスペリエンス改善プログラム (CEIP) への登録は必要ありません。

インターネット接続がない場合、vSAN リリース カタログは vCenter Server に直接アップロードできます。vSphere Client で、[構成] > [vSAN] > [更新] の順にクリックし、[リリース カタログ] セクションで [ファイルからアップロード] をクリックします。最新の vSAN リリース カタログをダウンロードできます。

Update Manager を使用すると、vSAN クラスタに推奨されるストレージ コントローラのファームウェアとドライバをインポートできます。vSAN では、一部のストレージ コントローラのベンダーから提供されるソフトウェア管理ツールを使用して、コントローラのドライバおよびファームウェアを更新できます。ESXi ホストに管理ツールがない場合は、このツールをダウンロードできます。

vSAN ビルドの推奨事項の操作

Update Manager は、インストールされている ESXi リリースを VMware 互換性ガイドのハードウェア互換性リスト (HCL) の情報に照らして確認します。Upgrade Manager は、最新の vSAN リリース カタログに基づいて、vSAN クラスタごとに正しいアップグレード パスを決定します。vSAN には、システムベースラインの推奨リリースに対して必要なドライバおよびパッチ更新も含まれます。

vSAN ビルドの推奨事項により、各 vSAN クラスタを現在のハードウェア互換性のステータス以上に維持できます。vSAN クラスタ内のハードウェアが HCL に含まれていない場合、vSAN は、最新リリースへのアップグレードを推奨することがあります。これは、最新リリースであれば現在の状態を下回ることはないためです。

注: Update Manager は、 vSAN クラスタ内のホストの修正事前チェックを実行するときに、 vSAN Health Service を使用します。 vSAN Health Service は、ESXi 6.0 Update 1 以前を実行するホストでは使用できません。Update Manager で ESXi 6.0 Update 1 以前を実行するホストがアップグレードされるとき、 vSAN クラスタ内の最後のホストでアップグレードに失敗する場合があります。 vSAN の健全性に関する問題が原因で修正に失敗した場合は、アップグレードを完了できます。 vSAN Health Service を使用してホストの健全性に関する問題を解決し、そのホストのメンテナンス モードを終了してアップグレード ワークフローを完了します。

次の例では、vSAN ビルドの推奨事項のロジックについて説明します。

例 1:
vSAN クラスタが 6.0 Update 2 を実行し、そのハードウェアが 6.0 Update 2 の HCL に含まれています。HCL には、リリース 6.0 Update 3 までがサポートされるハードウェアとしてリストされていますが、6.5 以降はサポートされないハードウェアとしてリストされています。 vSAN は、必要な重要パッチを含むリリース 6.0 Update 3 へのアップグレードを推奨します。
例 2:
vSAN クラスタが 6.0 Update 2 を実行し、そのハードウェアが 6.0 Update 2 の HCL に含まれています。このハードウェアはリリース 6.7 Update 3 の HCL でもサポートされています。 vSAN は、リリース 6.7 Update 3 へのアップグレードを推奨します。
例 3:
vSAN クラスタが 6.0 Update 2 を実行し、そのハードウェアがこのリリースの HCL に含まれていません。 vSAN は、ハードウェアが 6.7 Update 3 の HCL に記載されていない場合でも、6.7 Update 3 へのアップグレードを推奨します。 vSAN は、新しい状態が現在の状態を下回ることはないため、アップグレードを推奨します。
例 4:
vSAN クラスタが 6.0 Update 2 を実行し、そのハードウェアが 6.0 Update 2 の HCL に含まれています。このハードウェアは、リリース 6.7 Update 3 の HCL でもサポートされます。選択されたベースラインの設定は、パッチのみです。 vSAN は、必要な重要パッチを含むリリース 6.0 Update 3 へのアップグレードを推奨します。

推奨エンジンは定期的に実行されるか(1 日に 1 回)、または次のイベントが発生した場合に実行されます。

  • クラスタのメンバーシップが変更された場合。たとえば、ホストを追加または削除した場合。
  • vSAN 管理サービスが再起動した場合。
  • ユーザーが Web ブラウザまたは RVC 経由で My VMware にログインした場合。
  • 更新は、『VMware 互換性ガイド』または vSAN リリース カタログに対して行われます。

vSAN ビルドの推奨事項の健全性チェックにより、vSAN クラスタに推奨される現在のビルドが表示されます。機能に関する問題がある場合は、それに対する警告も表示されます。

システム要件

Update Manager は、Windows vCenter Server に手動でインストールする必要があります。

vSAN には、リリース メタデータの更新、『VMware 互換性ガイド』の確認、My VMware からの ISO イメージのダウンロードのためのインターネット アクセスが必要です。

vSAN は、My VMware からアップグレードする場合に ISO イメージをダウンロードするための有効な認証情報を必要とします。6.0 Update 1 以前を実行するホストでは、RVC を使用して My VMware の認証情報を入力する必要があります。それ以降のソフトウェアを実行するホストでは、ESX ビルドの推奨事項の健全性チェックからログインできます。

RVC から My VMware の認証情報を入力するには、次のコマンドを実行します:vsan.login_iso_depot -u <username> -p <password>