vSAN ストレージ ポリシーによって、仮想マシンのストレージ要件が定義されます。これらのポリシーによって、必要なサービスのレベルを確保するためにデータストア内で仮想マシンストレージ オブジェクトをプロビジョニングして割り当てる方法が決定されます。

ホスト クラスタで vSAN を有効にすると、1 つの vSAN データストアが作成され、デフォルト ストレージ ポリシーがそのデータストアに割り当てられます。

仮想マシンのストレージ要件が分かっている場合は、データストアで提供される機能を参照するストレージ ポリシーを作成できます。複数のポリシーを作成して、タイプまたはクラスが異なる要件を取得できます。

vSAN データストアにデプロイされる各仮想マシンに、少なくとも 1 つの仮想マシン ストレージ ポリシーが割り当てられます。ストレージ ポリシーは、仮想マシンを作成または編集するときに割り当てることができます。

注: 仮想マシンにストレージ ポリシーを割り当てない場合は、 vSAN によってデフォルト ポリシーが割り当てられます。デフォルト ポリシーでは [許容される障害の数] が 1 に設定されており、各オブジェクトに単一のディスク ストライプが設定され、シン プロビジョニングされた仮想ディスクが使用されます。

仮想マシン スワップ オブジェクトおよび仮想マシン スナップショット メモリ オブジェクトでは、仮想マシンに割り当てられたストレージ ポリシーに準拠しません。これらのオブジェクトでは、[許容される障害の数] が 1 に設定されます。これらのオブジェクトの可用性は、[許容される障害の数] に異なる値を使用するポリシーが割り当てられた他のオブジェクトとは一致しない場合があります。

表 1. ストレージ ポリシー ルール
機能 説明
許容される障害の数 (FTT) 仮想マシン オブジェクトで許容できるホストおよびデバイスの障害の数を定義します。n 個の障害が許容される場合、RAID 5 または RAID 6 を使用している場合にはパリティ コピーを含めて、書き込まれる各データは n+1 個の場所に保存されます。

フォルト ドメインを構成する場合、容量を提供するホストを含む 2n+1 個のフォルト ドメインが必要です。フォルト ドメインに属していないホストは、それ自体のシングル ホスト フォルト ドメインとみなされます。

パフォーマンスまたは容量を最適化するデータ レプリケーションの方法を選択できます。RAID-1(ミラーリング)の場合、オブジェクトのコンポーネントを配置するために使用するディスク容量は増えますが、オブジェクトにアクセスするパフォーマンスは向上します。RAID-5/6(イレージャ コーディング)の場合、使用するディスク容量は減りますが、パフォーマンスは低下します。

注: vSAN で仮想マシン オブジェクトの 1 つのミラー コピーを保護しない場合は、 [データの冗長性なし] を指定できます。ただし、ホストをメンテナンス モードに切り替えるときに異常な遅延が発生する可能性があります。この遅延は、 vSAN がメンテナンス操作を正常に完了できるように、オブジェクトをホストから退避させる必要があるため発生します。 [データの冗長性なし] を設定するとデータが保護されなくなり、 vSAN クラスタでデバイス障害が発生した場合にデータが損失する可能性があります。
注: ストレージ ポリシーを作成するときに [FTT] の値を指定しないと、 vSAN によって仮想マシン オブジェクトの 1 個のミラー コピーが作成され、許容できる障害は 1 つです。ただし、複数のコンポーネント障害が発生した場合、データにリスクが及ぶおそれがあります。
サイトの耐障害性 ストレッチ クラスタでは、このルールによって、[FTT] で定義された障害数に達した後、そのオブジェクトが許容できる追加のホストの障害数が定義されます。

なし - 標準クラスタがデフォルト値です。ストレッチ クラスタの場合は、ホスト アフィニティの優先サイトまたはセカンダリ サイトのデータを保持するように選択できます。

ホスト ミラーリング - 2 ノード クラスタは、FTT で定義された障害数に達した後にオブジェクトが許容できる追加の障害数を定義します。vSAN は、ディスク グループ レベルでオブジェクト ミラーリングを実行します。このルールを使用するには、各データ ホストに少なくとも 3 つのディスク グループが必要です。

サイト ミラーリング - ストレッチ クラスタは、FTT で定義された障害数に達した後にオブジェクトが許容できる追加のホスト障害数を定義します。

オブジェクトあたりのディスク ストライプの数 仮想マシン オブジェクトの各レプリカがストライピングされるキャパシティ デバイスの最小数。値が 1 より大きい場合、パフォーマンスが向上することがありますが、システム リソースの使用量も増加します。

デフォルト値は 1 です。最大値は 12 です。

デフォルトのストライピング値は変更できません。

ハイブリッド環境では、ディスク ストライプが磁気ディスクにまたがって分散されます。オールフラッシュ構成の場合は、キャパシティ レイヤーを構成するフラッシュ デバイスにまたがってストライピングされます。要求に対応できる十分なキャパシティ デバイスが vSAN 環境に配置されていることを確認してください。

フラッシュ読み取りキャッシュの予約 仮想マシン オブジェクトの読み取りキャッシュとして予約されているフラッシュ容量。仮想マシン ディスク (vmdk) オブジェクトの論理サイズのパーセントとして指定されます。予約済みのフラッシュ容量を他のオブジェクトが使用することはできません。予約されていないフラッシュはすべてのオブジェクトで適切に共有されます。特定のパフォーマンス問題に対処する場合にのみ、このオプションを使用します。

キャッシュを取得するために予約を設定する必要はありません。キャッシュの予約設定は常にオブジェクトに含まれるため、読み取りキャッシュの予約を設定すると、仮想マシン オブジェクトの移動時に問題が生じることがあります。

フラッシュ読み取りキャッシュの予約のストレージ ポリシー属性は、ハイブリッド構成でのみサポートされます。オールフラッシュ クラスタの仮想マシン ストレージ ポリシーを定義する際には、この属性は使用しないでください。

デフォルト値は 0% です。最大値は 100% です。

注: デフォルトでは、 vSAN により需要に基づいてストレージ オブジェクトに読み取りキャッシュが動的に割り当てられます。この機能により、リソースを最もフレキシブルかつ最適に使用できます。したがって、通常はこのパラメータのデフォルト値である 0 を変更する必要はありません。

パフォーマンスの問題を解決するときに値を増やす場合は、十分に注意してください。複数の仮想マシンにわたってキャッシュ予約を過剰にプロビジョニングすると、過剰予約によってフラッシュ デバイスの容量が無駄に使用される場合があります。このようなキャッシュ予約は、特定の時間に必要な容量を使用するワークロードを処理するためには利用できません。このように容量を無駄にしてサービスが提供できなくなると、パフォーマンスが低下するおそれがあります。

強制プロビジョニング このオプションを [はい] に設定すると、データストアがストレージ ポリシーで指定された [許容される障害の数][オブジェクトあたりのディスク ストライプの数][Flash Read Cache の予約] ポリシーを満たせない場合でも、オブジェクトはプロビジョニングされます。このパラメータは、シナリオをブートストラッピングする場合、および標準のプロビジョニングが行えなくなった停止時に使用します。

ほとんどの本番環境では、デフォルトの [いいえ] を許容できます。vSAN では、ポリシー要件が満たされないと仮想マシンのプロビジョニングに失敗しますが、ユーザー定義のストレージ ポリシーは正常に作成されます。

オブジェクト スペースの予約 仮想マシンのデプロイ時に予約する必要がある仮想マシン ディスク (vmdk) オブジェクトの論理サイズの割合(シック プロビジョニング)。以下のオプションを使用できます。
  • シン プロビジョニング(デフォルト)
  • 25% の予約
  • 50% の予約
  • 75% の予約
  • シック プロビジョニング
オブジェクト チェックサムの無効化 このオプションを [いいえ] に設定すると、オブジェクトはチェックサム情報を計算してそのデータの整合性を保ちます。このオプションを [はい] に設定すると、オブジェクトはチェックサム情報を計算しません。

vSAN はエンドツーエンド チェックサムを使用して、ファイルの各コピーがソース ファイルとまったく同じであることを確認してデータの整合性を保ちます。システムは読み取り/書き込み操作中にデータの妥当性を確認し、エラーが検出されると、vSAN はデータを修復するかエラーを報告します。

チェックサムの不一致が検出された場合、vSAN は正しくないデータを正しいデータで上書きすることによって自動的にデータを修復します。チェックサム計算とエラー修正はバックグラウンド操作として実行されます。

クラスタ内のすべてのオブジェクトのデフォルト設定は [いいえ] で、チェックサムは有効です。

オブジェクトの IOPS 制限 VMDK などのオブジェクトの IOPS 制限を定義します。IOPS は重み付けされたサイズを使用して I/O 操作の数として計算されます。システムがデフォルトの基本サイズである 32 KB を使用する場合、64-KB I/O は 2 個の I/O 操作を意味します。

IOPS の計算では読み取りと書き込みは同等であるとみなされ、キャッシュ ヒット率およびシーケンスは考慮されません。ディスクの IOPS が制限値を超えると I/O 操作が調整されます。[オブジェクトの IOPS 制限] を 0 に設定した場合、IOPS 制限は適用されません。

vSAN では、最初の 2 回の操作中または無効期間の後に、オブジェクトが IOPS 制限の比率を 2 倍にできます。

仮想マシン ストレージ ポリシーを操作する場合、ストレージ機能が vSAN クラスタのストレージ容量の使用にどのように影響するかを把握しておく必要があります。ストレージ ポリシーの設計およびサイジングに関する考慮事項の詳細については、『VMware vSAN の管理』の「vSAN クラスタの設計とサイジング」を参照してください。

vSAN によるポリシー変更の管理方法

vSAN 6.7 Update 3 以降では、ポリシー変更を管理することにより、クラスタ全体で消費される一時的な容量の大きさを削減しています。一時的な容量は、vSAN がポリシー変更のためにオブジェクトを再構成するときに生成されます。

ポリシーを変更すると、変更は受け入れられますが、ただちに適用されるわけではありません。vSAN は、一時的な容量を一定に維持するために、ポリシー変更要求をバッチ処理して非同期的に実行します。

5 ノードのクラスタ上で RAID5 ポリシーを RAID6 に変更するなど、容量に関連しない理由の場合、ポリシー変更はただちに拒否されます。

vSAN キャパシティ モニターで、一時的な容量の使用状況を確認できます。オブジェクトのポリシー変更のステータスを確認するには、vSAN Health Service を使用して vSAN オブジェクトの健全性を確認します。