クラスタまたはホストの修正中に、仮想マシンの状態をホスト メモリに保持し、修正が完了した後にメモリからリストアすることができます。仮想マシンをメモリにサスペンドし、Quick Boot 機能を使用すると、修正時間が大幅に短縮され、システムの起動時間が最小になり、システムおよびサービスのダウンタイムが減少します。
vSphere Lifecycle Manager を使用した修正の際、修正中のホストから別のホストに仮想マシンを移行すると、かなりの時間がかかります。修正後、vSphere Lifecycle Manager は、仮想マシンを修正されたホストに移行して戻します。ただし、仮想マシンの移行、パワーオフ、またはディスクへのサスペンドを行う代わりに、メモリにサスペンドするように vSphere Lifecycle Manager を構成できます。
メモリへのサスペンド機能は、パッチ適用操作にのみ使用できます。たとえば、クラスタまたはスタンドアローン ホストを修正してホット パッチや Express Patch などを適用する場合です。メモリへのサスペンド オプションをアップグレード操作(ESXi ホストをバージョン 7.0 からバージョン 8.0 にアップグレードする場合など)に使用することはできません。
仮想マシンのメモリへのサスペンド
メモリへのサスペンドは vSphere Lifecycle Manager イメージを使用して管理するクラスタまたはホストに対してのみ使用可能なオプションです。この機能は Quick Boot 設定と連携して修正プロセスを最適化し、仮想マシンのダウンタイムを最小限に抑えます。
vSphere Lifecycle Manager を有効にすると、vSphere Lifecycle Manager ホストの修正設定を構成するときに、仮想マシンをメモリにサスペンドできます。修正の事前チェック中および修正中に、vSphere Lifecycle Manager は、[メモリのサスペンド] オプションが、修正中のホストまたはクラスタに実際に適用可能であることを確認します。何らかの理由でメモリへのサスペンドを適用できない場合、vSphere Lifecycle Manager はエラーを報告し、修正が続行されないようにします。
メモリへのサスペンド操作中、仮想マシンは、しばらくの間サスペンド状態のままになります。このため、仮想マシンをメモリにサスペンドすると、それらの仮想マシンで実行されているワークロードに影響を与える可能性があります。この影響は、ディスクへのサスペンド操作が仮想マシンおよびワークロードに与える影響と同様のものです。
- vSphere ESX Agent Manager (EAM) 仮想マシン
vSphere Lifecycle Manager は、他のすべての仮想マシンがサスペンドされた後に EAM 仮想マシンをパワーオフします。同様に vSphere Lifecycle Manager は、他の仮想マシンがメモリからレジュームされる前に EAM 仮想マシンをパワーオンします。EAM 仮想マシンがパワーオンされるまで、サスペンド状態の仮想マシンはレジュームされません。
- vSphere クラスタ サービス仮想マシン
vSphere Lifecycle Manager は、最初に vSphere クラスタ サービス仮想マシンを別のホストに移行してから、ホスト上の残りの仮想マシンをメモリにサスペンドします。
- vCenter Server
- vSAN 監視仮想マシン
- vSphere with Tanzu
- NSX
- VMware HCX
- vSphere Replication
- Site Recovery Manager
- VMware Aria 製品
Quick Boot
Quick Boot の設定は、vSphere Lifecycle Manager イメージと vSphere Lifecycle Manager ベースラインを使用して管理するクラスタまたはスタンドアローン ホストで使用できます。Quick Boot を使用すると、ホストのパッチ適用およびアップグレード操作が最適化されます。Quick Boot を使用すると、vSphere Lifecycle Manager でパッチおよびアップグレード操作を実行するホストの修正時間を短縮することができます。パッチおよびアップグレード操作は、ホストのハードウェアに影響しません。Quick Boot 機能が有効になっている場合、vSphere Lifecycle Manager はハードウェアの再起動(BIOS または UEFI ファームウェアの再起動)をスキップします。その結果、ESXi ホストがメンテナンス モードに費やす時間が短縮され、修正中の障害のリスクが最小化されます。
仮想マシンをホストのメモリにサスペンドするように vSphere Lifecycle Manager を構成するには、Quick Boot を有効にする必要があります。ただし、[メモリのサスペンド] オプションを使用しない場合でも、Quick Boot を有効にすることは可能です。
メモリへのサスペンドを使用するための要件
- ホストがメモリへのサスペンド機能をサポートしている。
- クラスタまたはスタンドアローン ホストで Quick Boot が有効になっていて、修正中のホストが Quick Boot をサポートしている。
- 修正にホストのアップグレードまたはファームウェアのアップグレードが含まれていない。
- ホストと仮想マシンが特定の要件を満たしている。
ホスト要件 仮想マシンの要件 - ホストに十分な空きメモリがある。
- ホストに十分な空き低メモリがある。
- ホストに、再起動後に各 NUMA ノードが開始するのに十分な空きメモリがある。
- ホストに使用可能な予約が十分にある。
- ホストが、スワップされた仮想マシン ページまたは圧縮された仮想マシン ページを使用していない。
- 仮想マシンにパススルー デバイスがない。
- 仮想マシンの遅延感度が高に設定されている。
- 仮想マシンがフォルト トレランスでない。
- 仮想マシンが暗号化されていない。
- 仮想マシンが永続的なメモリを使用していない。
- 仮想マシンに仮想 SGX デバイスまたは SEV デバイスがない。
- 仮想マシンのサスペンド機能が無効になっていない。
- 仮想マシンが、インスタント クローン操作中に凍結されたソース仮想マシンではない。
メモリへのサスペンドと vSphere の高可用性 (HA)
- 修正中にクラスタの vSphere HA を無効にしたり、再構成したりすると、vSphere HA はサスペンド状態の仮想マシンを保護できなくなります。vSphere HA 構成を変更する前に、クラスタ内のホストがメンテナンス モードになっておらず、サスペンドされた仮想マシンがパワーオン状態であることを確認します。
- [メモリのサスペンド] オプションを使用するように vSphere Lifecycle Manager を構成した後に vSphere HA の
das.failoverDelayForSuspendToMemoryVmsSecs
詳細オプションを変更した場合、新しく指定されたタイムアウト値が仮想マシンに適用されない場合があります。das.failoverDelayForSuspendToMemoryVmsSecs
オプションのデフォルト値を変更する必要がある場合は、修正を開始する前にデフォルト値の変更を行い、新しい値が有効になるようにしてください。 - メモリへのサスペンド操作が失敗した場合、vSphere HA は、指定したタイムアウト値が経過した後に、最適なフェイルオーバー ホストを決定します。フェイルオーバー ホストは、元のホストになることも、別のホストになることもあります。
- クラスタ内のすべての ESXi ホストでサーバ時刻を同期する必要があります。ホストが同期されていない場合、vSphere HA には、指定したタイムアウト期間が反映されず、フェイルオーバーの開始時間が前後にずれる可能性があります。
vSphere HA の使用方法と構成方法については、vSphere の可用性のドキュメントを参照してください。