DRS が有効になっているクラスタでは、クラスタ内の一部のホストのみをターゲットにしている DRS によって多数の仮想マシンの移行が開始されることがあります。

DRS は、クラスタ内のホストを 1 分ごとにスキャンして、ロード バランシング ワークフローの一環として使用できる推奨事項を確認します。この結果は、クラスタ内のホストに対して行った、パワーオン状態の仮想マシンの互換性チェックの結果に依存します。仮想マシンの互換性のあるホスト セットをクラスタ内の特定のホストに絞り込む互換性の制約がある場合、DRS はその仮想マシンを互換性のあるホストの 1 つに移行することで、これらの制約を満たそうとします。

通常、この制約には、クラスタ内の静的なユーザー構成とランタイム状態の変化という 2 つのソースがあります。この記事では、ユーザーに予期せずに発生する可能性のあるランタイム状態の変化に焦点を当てています。

パワーオン状態の仮想マシンとホスト間の互換性に影響を与える可能性のあるランタイム状態の変化は、次のいずれかの領域に分類できます。

vSphere High Availability

HA が有効なクラスタでは、すべてのホストの HA ステータスが健全であると想定されます。いずれかの時点でホストの HA ステータスが健全でなくなった場合は、仮想マシンの互換性チェック中に互換性エラーが発生します。このような状況の例としては、HA エージェントにアクセスできない、HA エージェントが隔離されている、HA エージェントがパーティション分割されているなどがあります。詳細については、vSphere HA ホスト状態のトラブルシューティングを参照してください。

通常、これらの状態は、vCenter Server で次のイベントが発生した場合に変化します。

「ホスト上の vSphere HA エージェントにエラーがあります」

ストレージのアクセス可能性

現在のホストから仮想マシンの構成ファイル(VMX ファイル)、仮想ディスク (VMDK)、またはスワップ ファイルにアクセスできない場合、互換性チェックに失敗して、現在のホストの互換性が失われます。クラスタ内の別のホストからこれらのファイルに引き続きアクセスできる場合、DRS は仮想マシンをこのホストに移行しようとする可能性があります。このような移行の結果は、現在のホストから仮想マシンの VMX ファイルへのアクセス可能性によって異なります。仮想マシンが VMDK へのアクセス可能性だけを失い、VMX ファイルにはアクセスできる場合、移行は成功する可能性があります。仮想マシンが VMX ファイルへのアクセス可能性を失うと、移行は失敗する可能性があります。

ネットワークのアクセス可能性

NSX-T を使用する環境の場合、さまざまな時点において、一部のホストまたはすべてのホストで NSX コンポーネントのステータスが停止されることがあります。7.0u2 より前のバージョンの vCenter Server では、仮想マシンと関連するホストの互換性チェックに失敗する可能性があります。

解決方法

  1. ユーザーが上記のランタイム状態の変化につながる可能性のある操作を実行する予定がある場合、DRS を一時的に手動モードに設定すると、望ましくない移行を回避できます。また、DRS 詳細オプション VmsPerLBIteration を一時的に 0 に設定することもできます。このオプションを指定すると、ロード バランシング ワークフロー中に DRS が仮想マシンをスキャンしないよう要求されるため、移行の推奨事項はスキャンされません。
  2. vCenter 7.0 Update 1 以降、DRS には、パワーオン状態の仮想マシンと現在のホストの間に互換性がなくても、事前定義された期間 (CompatCheckTransientFailureTimeSeconds) であれば許容する詳細オプションが導入されました。ユーザーはこのオプションを構成して、一時的な非互換性のために望ましくない移行が行われるのを回避できます。
注: このオプションのデフォルト値は 600(10 分)です。つまり、互換性がない状態が続いたとしても、継続期間が 10 分未満であれば、現在のホストとの互換性がないという理由だけで DRS が仮想マシンを移行することはなくなります。このオプションの最大値は 3600(60 分)です。

vCenter 7.0 Update 3 および 8.0 Update 1 以降では、このオプションを -1 に設定することもできます。このように設定すると、現在のホストとの互換性がないという理由で DRS が仮想マシンを移行することは禁止されます。

vCenter 8.0 Update 3 以降では、このオプションのデフォルト値は -1 に設定されます。

DRS の詳細オプションを設定するには、vSphere クライアントから次の手順を実行します。

  1. DRS クラスタを右クリックし、Settings > vSphere DRS > Edit > Advanced Options > Add をクリックします。
  2. [オプション] 列にオプション名を入力します。
  3. [値] 列をクリックして目的の値を入力し、OK をクリックしてこの設定を有効にします。