レプリケーションを構成すると、複数時点 (MPIT) の仮想マシン レプリカ インスタンスを最大 24 個まで保持できます。

レプリケートされた仮想マシンをリカバリすると、保持されていたレプリカが仮想マシンのスナップショットとして vSphere Clientに表示されます。スナップショットのリストには、レプリケートされたインスタンスが設定したリテンション ポリシーに従って含められ、さらに最新のインスタンスも含められます。これらのスナップショットを使用して、リカバリされた仮想マシンを以前の状態に戻すことができます。

過去 5 日間について毎日 3 つのインスタンスを保持するといった構成が可能です。スナップショットのリストには、仮想マシンの 15 個のスナップショットと最後に保存されたインスタンスを合わせて、計 16 個が含められます。

リテンション ポリシーはレプリケーションのスケジュールおよび RPO と直接関連付けられているわけではないので、管理者はレプリカ インスタンスの正確な作成時期を構成することはできません。このため、同じリテンション ポリシーによってレプリケーションを実行しても、同じ瞬間にレプリカが作成されるとは限りません。

リテンション ポリシーなしの RPO

デフォルトでは、vSphere Replication は 1 時間の目標復旧ポイント(RPO)に設定されています。そのため、使用可能な最新のレプリカ インスタンスは、1 時間より古い仮想マシンの状態を反映することはできません。RPO 間隔は、レプリケーションを構成または再構成する際に調整できます。

最新のレプリケーション インスタンス作成後の経過時間が RPO 間隔に近づいてくると、vSphere Replication は同期操作を開始してターゲット サイト上にインスタンスを作成します。レプリケーション インスタンスには、同期が開始された時点の仮想マシンの状態が反映されます。リテンション ポリシーを構成しないと、新規のインスタンスが作成されたときに、直前のインスタンスが期限切れになり、vSphere Replication サーバによって削除されます。

RPO とリテンション ポリシーの連係動作

RPO 同期中に作成されたレプリカ インスタンスの一部を保存するため、レプリケーションごとに最大 24 個のインスタンスを保持するよう vSphere Replication を構成できます。vSphere Replication によって保持されるインスタンスの正確な数は、固有のアルゴリズムを適用することによって決まります。このアルゴリズムを使用することで、vSphere Replication サーバは、各インスタンスをリテンション ポリシーのスロットに一致させようと試みます。どのスロットにも一致しないインスタンスは期限切れとなり削除されます。1 つのスロットに複数のインスタンスが格納される場合は、保持基準に一致しないインスタンスも削除されます。最後に作成されたインスタンスは vSphere Replication によって常に保持され、保持するインスタンスの数を決定する時期は含まれません。

最新のインスタンス作成後の経過時間が RPO 間隔に近づいてくると、 vSphere Replication はレプリカ インスタンスの作成を開始します。同期操作の開始時刻が新しいインスタンスの作成時刻になります。同期操作が完了すると、 vSphere Replication は既存のレプリカ インスタンスを評価して、どちらを保持するかを決定します。
  1. リテンション ポリシーの粒度は、レプリケーション設定に基づいて決まります。たとえば、過去 1 日について 3 つのインスタンスを保持するよう vSphere Replication を構成した場合は、24 時間に渡って比較的均等な時間間隔で分散された 3 つのレプリカ インスタンスを保持するという意図を示しています。つまり、ほぼ 8 時間ごとに 1 つのインスタンスを保持することになり、このリテンション ポリシーの粒度は 8 時間になります。
  2. 最後に保存されたインスタンスの時刻は最も近いスロット時刻に丸められます。粒度が 8 時間の場合、スロット時刻は、0:00、8:00、および 16:00 になります。
  3. 最も近いスロット時刻と最後に保存されたインスタンスの間にあるインスタンスがトラバースされます。たとえば、最後に保存されたインスタンスの時刻が 10:55 であるとします。上記のレプリケーション設定では、最も近いスロット時刻は 8:00 になります。また、RPO は 1 時間とし、各同期操作の所要時間は 5 分とします。8:00 と 10:55 の間では、スロットに 8:55 のインスタンスと 9:55 のインスタンスが格納されます。
  4. 最も近いスロット時刻以降のインスタンスのうち最も早く作成されたインスタンスが保存され、同じスロット内の残りのインスタンスは削除されます。ただし、最後に作成されたインスタンスは vSphere Replication に常に保持されます。上記の例では、8:55 のインスタンスが保存され、9:55 のインスタンスは削除されます。10:55 のインスタンスは最後に作成されたインスタンスなので、これも保存されます。
  5. リテンション ポリシーの粒度分だけスロット時刻が減り、現在のスロットの開始時刻と直前のスロットの開始時刻の間で最も早いインスタンスが探索されます。このスロットに期限切れのインスタンスが含まれている場合は削除されます。
  6. 保存されたインスタンスが格納されているスロットの数が分析されます。保存されたインスタンスが格納されているスロットの数が、リテンション ポリシーによって決定されたスロットの数より多い場合は、保存されたインスタンスのうち最も古いものが期限切れになり削除されます。このとき、最後に保存されたインスタンスはカウントされません。上記の例では、前日の 8:00 ~ 16:00 の間に保存されたインスタンスが存在する場合、そのインスタンスは削除されます。

vSphere Replication で保持されるレプリケーション インスタンスの数は、構成されているリテンション ポリシーによって異なりますが、これらのインスタンスが作成されるために RPO 期間が十分短いことも要求されます。vSphere Replication では、RPO 設定によって十分な数のインスタンスが保持されるかどうか検証しません。また、インスタンスの数が不十分でも警告メッセージを表示しません。このため、保持する必要がある数だけインスタンスが作成されるように vSphere Replication が設定されていることを確認する必要があります。たとえば、vSphere Replication で 1 日に 6 個のレプリケーション インスタンスが保持されるように設定した場合、vSphere Replication で 24 時間で 6 個のインスタンスが作成されるように、RPO 期間は 4 時間を超えてはなりません。