ユニキャスト トラフィックとは、ネットワーク内のある地点から別の地点に 1 対 1 で送信を行うことを意味します。ネットワークの設計と展開を簡素化するため、vSAN バージョン 6.6 以降ではユニキャストを使用しています。
すべての ESXi ホストがユニキャスト トラフィックを使用し、vCenter Server がクラスタ メンバーシップのソースになります。vSAN ノードは、vCenter Server から提供される最新のホスト メンバーシップ リストを使用して自動的に更新されます。vSAN は、CMMDS の更新でユニキャスト通信を行います。
vSAN バージョン 6.6 以前のリリースでは、ハートビートを有効にし、クラスタ内のホスト間でメタデータをやり取りするには、マルチキャストが必要です。vSAN クラスタにそれ以前のバージョンのソフトウェアを実行しているホストがある場合は、マルチキャスト ネットワークが必要です。マルチキャストからユニキャスト ネットワークへの切り替えにより、パフォーマンスとネットワークのサポートが向上します。マルチキャストの詳細については、vSAN ネットワークでのマルチキャストの使用を参照してください。
バージョン 5 より前のディスク グループの動作
vSAN バージョン 6.6 ディスク グループ内でバージョン 5 のディスク グループが 1 つだけ使用可能な場合、クラスタは常にユニキャスト モードで通信を行います。
- すべてのクラスタ ホストがバージョン 6.5 以前の vSAN を実行している。
- すべてのディスク グループが、バージョン 3 以前のオンディスクを使用している。
- vSAN 6.2 や vSAN 6.5 など、vSAN 6.6 以外のホストがクラスタに追加されている。
たとえば、vSAN 6.5 以前を実行しているホストが既存の vSAN 6.6 クラスタに追加されると、クラスタはマルチキャスト モードに戻り、6.5 ホストが有効なノードとして追加されます。この動作を回避するには、ESXi ホストとオンディスク フォーマットの両方で最新バージョンを使用します。vSAN クラスタがユニキャスト モードでの通信を継続し、マルチキャストに戻らないようにするには、vSAN 6.6 ホストのディスク グループをオンディスク バージョン 5.0 にアップグレードします。
バージョン 5 のディスク グループの動作
vSAN バージョン 6.6 クラスタ内にバージョン 5 のディスク グループが 1 つしか存在しない場合、クラスタは常にユニキャスト モードで通信を行います。
vSAN 6.6 クラスタがすでにオンディスク バージョン 5 を使用していて、vSAN 6.5 ノードがクラスタに追加されている環境では、次のイベントが発生します。
- vSAN 6.5 ノードは、独自のネットワーク パーティションを形成します。
- vSAN 6.5 ノードは引き続きマルチキャスト モードで通信を行いますが、ユニキャストモードを使用する vSAN 6.6 ノードと通信を行うことはできません。
オンディスク フォーマットについてクラスタのサマリ警告が表示され、1 つのノードが以前のバージョンであることが示されます。ノードを最新バージョンにアップグレードできます。クラスタが混合モードの場合、ディスク フォーマットのバージョンをアップグレードすることはできません。
ユニキャスト ネットワークでの DHCP サポート
vSAN 6.6 クラスタに展開された vCenter Server は、予約機能のない Dynamic Host Configuration Protocol (DHCP) からの IP アドレスを使用できます。
予約機能付きの DHCP を使用する理由は、割り当てられた IP アドレスが VMkernel ポートの MAC アドレスに関連付けられるためです。
ユニキャスト ネットワークでの IPv6 サポート
vSAN 6.6 は、ユニキャスト通信で IPv6 をサポートします。
IPv6 では、リンクローカル プリフィックスを使用して、任意のインターフェイスにリンクローカル アドレスが自動的に設定されます。デフォルトでは、vSAN はノードのリンク ローカル アドレスを他の隣接クラスタ ノードに追加しません。このため、vSAN 6.6 では、ユニキャスト通信に IPv6 リンク ローカル アドレスを使用できません。
ESXCLI を使用したユニキャストのクエリ
ESXCLI コマンドを実行して、ユニキャスト構成を特定できます。
通信モードの表示
esxcli vsan cluster get
コマンドを使用すると、vSAN クラスタ ノードの CMMDS モード(ユニキャストまたはマルチキャスト)を表示できます。
手順
- ♦
esxcli vsan cluster get
コマンドを実行します。
結果
Cluster Information
Enabled: true
Current Local Time: 2020-04-09T18:19:52Z
Local Node UUID: 5e8e3dc3-43ab-5452-795b-a03d6f88f022
Local Node Type: NORMAL
Local Node State: AGENT
Local Node Health State: HEALTHY
Sub-Cluster Master UUID: 5e8e3d3f-3015-9075-49b6-a03d6f88d426
Sub-Cluster Backup UUID: 5e8e3daf-e5e0-ddb6-a523-a03d6f88dd4a
Sub-Cluster UUID: 5282f9f3-d892-3748-de48-e2408dc34f72
Sub-Cluster Membership Entry Revision: 11
Sub_cluster Member Count: 5
Sub-Cluster Member UUIDs: 5e8e3d3f-3015-9075-49b6-a03d6f88d426, 5e8e3daf-e5e0-ddb6-a523-a03d6f88dd4a,
5e8e3d73-6d1c-0b81-1305-a03d6f888d22, 5e8e3d33-5825-ee5c-013c-a03d6f88ea4c, 5e8e3dc3-43ab-5452-795b-a03d6f88f022
Sub-Cluster Member HostNames: testbed-1.vmware.com, testbed2.vmware.com,
testbed3.vmware.com, testbed4.vmware.com, testbed5.vmware.com
Sub-Cluster Membership UUID: 0f438e5e-d400-1bb2-f4d1-a03d6f88d426
[ユニキャスト モード有効:true]
Maintenance Mode State: OFF
Config Generation: ed845022-5c08-48d0-aa1d-6b62c0022222 7 2020-04-08T22:44:14.889
vSAN クラスタ ホストの確認
esxcli vsan cluster unicastagent list
コマンドを使用して、vSAN クラスタ ホストがユニキャスト モードで動作しているかどうかを確認します。
手順
- ♦
esxcli vsan cluster unicastagent list
コマンドを実行します。
結果
NodeUuid IsWitness Supports Unicast IP Address Port Iface Name Cert Thumbprint SubClusterUuid ------------------------------------ --------- ---------------- ---------- ----- ---------- 5e8e3d73-6d1c-0b81-1305-a03d6f888d22 0 true 10.198.95.10 12321 43:80:B7:A1:3F:D1:64:07:8C:58:01:2B:CE:A2:F5:DE:D6:B1:41:AB 5e8e3daf-e5e0-ddb6-a523-a03d6f88dd4a 0 true 10.198.94.240 12321 FE:39:D7:A5:EF:80:D6:41:CD:13:70:BD:88:2D:38:6C:A0:1D:36:69 5e8e3d3f-3015-9075-49b6-a03d6f88d426 0 true 10.198.94.244 12321 72:A3:80:36:F7:5D:8F:CE:B0:26:02:96:00:23:7D:8E:C5:8C:0B:E1 5e8e3d33-5825-ee5c-013c-a03d6f88ea4c 0 true 10.198.95.11 12321 5A:55:74:E8:5F:40:2F:2B:09:B5:42:29:FF:1C:95:41:AB:28:E0:57
出力には、vSAN ノード UUID、IPv4 アドレス、IPv6 アドレス、vSAN ノードが通信する UDP ポート、ノードがデータホスト (0) か Witness(監視)ホスト (1) かが表示されます。この出力を使用して、ユニキャスト モードで動作している vSAN クラスタ ノードを特定し、クラスタ内の他のホストを確認できます。vCenter Server は、出力リストを保持します。
vSAN ネットワーク情報の表示
esxcli vsan network list
コマンドを使用して、vSAN が通信に使用する VMkernel インターフェイス、ユニキャストポート (12321)、vSAN インターフェイスに関連付けられたトラフィック タイプ(vSAN または監視)などの vSAN ネットワーク情報を表示します。
手順
- ♦
esxcli vsan network list
コマンドを実行します。
結果
Interface
VmkNic Name: vmk1
IP Protocol: IP
Interface UUID: e290be58-15fe-61e5-1043-246e962c24d0
Agent Group Multicast Address: 224.2.3.4
Agent Group IPv6 Multicast Address: ff19::2:3:4
Agent Group Multicast Port: 23451
Master Group Multicast Address: 224.1.2.3
Master Group IPv6 Multicast Address: ff19::1:2:3
Master Group Multicast Port: 12345
[Host Unicast Channel Bound Port: 12321]
Multicast TTL: 5
Traffic Type: vsan
この出力には、マルチキャスト情報も表示されます。
クラスタ内のトラフィック
ユニキャスト モードの場合、プライマリ ノードはクラスタ内のすべての vSAN ノードに同じメッセージを送信するときに、すべてのクラスタ ノードにメッセージを送信します。
たとえば、vSAN ノードの数が N の場合、プライマリ ノードは N 回そのメッセージを送信します。その結果、vSAN CMMDS トラフィックがわずかに増加します。通常の安定した状態では、トラフィックがわずかに増加していることに気付かない可能性があります。
単一ラックでのクラスタ内のトラフィック
vSAN クラスタ内のすべてのノードが同じトップオブラック (TOR) のスイッチに接続されている場合、トラフィックの増加は、プライマリ ノードとスイッチの間でのみ発生します。
vSAN クラスタが複数の TOR スイッチにまたがる場合は、スイッチ間のトラフィックが増加します。クラスタが複数のラックにまたがる場合、ラックを認識するために複数の TOR でフォルト ドメイン (FD) が形成されます。プライマリ ノードは、ラックまたはフォルト ドメインに N 個のメッセージを送信します(N は各フォルト ドメインのホスト数)。
vSAN ストレッチ クラスタ内のクラスタ内トラフィック
vSAN ストレッチ クラスタでは、プライマリ ノードは優先サイトにあります。
フォルト ドメインでは、CMMDS データをセカンダリ サイトから優先サイトに送信する必要があります。vSAN ストレッチ クラスタ内のトラフィックを計算するには、セカンダリ サイトのノード数に CMMDS ノードのサイズ (MB) を掛け、その結果にセカンダリ サイトのノード数を掛ける必要があります。
vSAN ストレッチ クラスタ内のトラフィック = セカンダリ サイト内のノード数 * CMMDS ノード サイズ (MB) * セカンダリ サイトのノード数。
ユニキャスト トラフィックでは、監視サイトのトラフィック要件は変わりません。