vSAN を使用すると、vSphere 内で共有ストレージをプロビジョニングできます。vSAN はホスト クラスタのローカル デバイスまたは直接接続されたストレージ デバイスを統合し、vSAN クラスタのすべてのホストで共有される単一のストレージ プールを作成します。

vSAN は分散型の共有ストレージ ソリューションで、vSAN ストレージ トラフィック用に最適化された高可用性ネットワークが必要になります。高パフォーマンスで可用性の高いネットワークがなければ、vSAN の展開に成功することはできません。このガイドでは、vSAN ネットワークの設計と構成に関する推奨事項について説明します。

vSAN は、高パフォーマンスで回復力が高くスケーラブルなネットワークを前提とする分散アーキテクチャになっています。vSAN クラスタ内のすべてのホストノードは IP ネットワークを介して通信を行います。レイヤー 2 またはレイヤー 3 ネットワークを介した通信を可能にするため、すべてのホストが IP ユニキャスト接続を維持する必要があります。ユニキャスト通信の詳細については、「vSAN ネットワークでのユニキャストの使用」を参照してください。

vSAN ネットワークの用語および定義

vSAN では、独自の用語と定義が使用されており、これらを理解することが重要となります。vSAN ネットワークの設計を開始する前に、vSAN ネットワークの重要な用語と定義を確認してください。
用語 定義
CLOM Cluster-Level Object Manager (CLOM) は、オブジェクトの構成がそのストレージ ポリシーと一致することを保証します。CLOM は、そのポリシーを満たすのに十分なフォルト ドメインが使用可能かどうかを確認します。クラスタ内のコンポーネントと監視の配置場所を決定します。
CMMDS クラスタの監視、メンバーシップ、ディレクトリ サービス (CMMDS) は、ネットワーク化されたノード メンバーのクラスタのリカバリとメンテナンスを行います。ホスト ノード、デバイス、ネットワークなどのアイテムのインベントリを管理します。また、vSAN オブジェクトのポリシーや RAID 構成などのメタデータ情報も保存します。
DOM Distributed Object Manager (DOM) は、コンポーネントの作成とクラスタ全体への配布を行います。DOM オブジェクトが作成されると、ノード(ホスト)の 1 つがそのオブジェクトの DOM 所有者に任命されます。このホストは、クラスタ全体でそれぞれの子コンポーネントを特定し、vSAN ネットワークを介して I/O を各コンポーネントにリダイレクトして、すべての IOPS をその DOM オブジェクトに渡します。DOM オブジェクトには、vdisk、スナップショット、vmnamespace、vmswap、vmem などがあります。
LSOM Log-Structured Object Manager (LSOM) は、vSAN コンポーネントまたは LSOM オブジェクト(データ コンポーネントまたは監視コンポーネント)として vSAN ファイル システムにデータをローカルに格納します。
NIC チーミング ネットワーク インターフェイス カード (NIC) チーミングは、高可用性とロード バランシングを実現するため、チームとして設定された 2 つ以上のネットワーク アダプタ (NIC) です。
NIOC Network I/O Control (NIOC) は、vSphere Distributed Switch 上に複数のネットワーク トラフィック タイプがある場合に、そのバンド幅を判断します。バンド幅の分布はユーザーが設定可能なパラメータです。NIOC が有効になっている場合、Distributed Switch のトラフィックは、フォールト トレランス トラフィック、iSCSI トラフィック、vMotion トラフィック、管理トラフィック、vSphere Replication トラフィック、NFS トラフィック、仮想マシン トラフィックなど、事前定義済みのネットワーク リソース プールに分けられます。
オブジェクトとコンポーネント 各オブジェクトは、一連のコンポーネントで構成されます。これらは、仮想マシンのストレージ ポリシーが使用する機能に応じて決定されます。

vSAN データストアには、いくつかのオブジェクト タイプが含まれます。

  • [仮想マシンの Home 名前空間] - 仮想マシンの Home 名前空間は、すべての仮想マシン構成ファイルが格納される仮想マシンのホーム ディレクトリです。ここには、.vmx、ログ ファイル、vmdks、スナップショットの差分記述ファイルなどが格納されます。
  • [VMDK] - VMDK は、仮想マシンのハード ディスク ドライブの内容を格納する、仮想マシンのディスク ファイル(.vmdk ファイル)です。
  • [仮想マシンのスワップ オブジェクト] - 仮想マシンのスワップ オブジェクトは、仮想マシンのパワーオン時に作成されます。
  • [スナップショット差分 VMDK] - スナップショット差分 VMDK は、仮想マシンのスナップショットの作成時に生成されます。
  • [メモリ オブジェクト] - メモリ オブジェクトは、仮想マシンの作成またはサスペンド時に、スナップショット メモリ オプションを選択すると作成されます。
RDT Reliable Data Transport (RDT) プロトコルは、vSAN VMkernel ポートを介したホスト間の通信に使用されます。トランスポート レイヤーで TCP を使用し、必要に応じて TCP 接続(ソケット)の作成と破棄を行います。大きなファイルを送信するように最適化されています。
SPBM ストレージ ポリシー ベースの管理 (SPBM) は、広範なデータ サービスおよびストレージ ソリューション間で単一の統合されたコントロール ペインとして機能するストレージ ポリシー フレームワークです。このフレームワークは、ストレージで仮想マシンのアプリケーションのニーズを満たすのに役立ちます。
VASA vSphere Storage APIs for Storage Awareness (VASA) は、vCenter Server がストレージ アレイの機能を認識するための一連のアプリケーション プログラム インターフェイス (API) です。VASA プロバイダは、vCenter Server と通信を行い、ポリシーベースの管理、運用管理、DRS 機能をサポートするストレージ トポロジ、機能、状態情報を確認します。
VLAN VLAN は、単一の物理 LAN セグメントをさらにセグメント化して、ポート グループが物理的に別々のセグメントにあるかのように、互いに分離できます。
監視コンポーネント 監視は、メタデータのみを含み、実際のアプリケーション データは何も含まないコンポーネントです。障害が発生した後、存続しているデータストアのコンポーネントの可用性に関して決定を下す場合のタイブレーカとして機能します。オンディスク フォーマット 1.0 を使用する場合、監視は vSAN データストアでメタデータにおよそ 2 MB の容量を使用し、バージョン 2.0 以降のオンディスク フォーマットでは 4 MB の容量を使用します。