ネットワークでは、データパス内の複数のエンドポイントで遅延が発生します。ネットワーク管理者は、ネットワーク パフォーマンスのボトルネックを診断して問題を解決するために、ネットワークの遅延をモニタリングする必要があります。

ホスト トランスポート ノードでは、次のネットワーク遅延の統計を測定できます。
  • 物理 NIC から vNIC
  • vNIC から物理 NIC
  • vNIC から vNIC
  • VTEP から VTEP
NSX-T Data Center で遅延統計を測定する場合。次のような制限があります。
  • データ プレーンのネットワーク遅延を測定する場合、ESXi ホスト トランスポート ノードのみがサポートされています。
  • KVM ホストと Edge トランスポート ノードはサポートされていません。
  • VLAN セグメントでは、2 つの vNIC が同じ ESXi ホスト上の仮想マシンに属している場合にのみ、ネットワーク遅延を測定できます。
  • 仮想マシンが別々のセグメントに接続されている場合、ネットワーク遅延は、ESXi ホスト トランスポート ノードの分散ルーター (DR) インスタンスを介してデータ トラフィックがルーティングされている場合にのみ測定されます。データ トラフィックが Edge トランスポート ノードの DR インスタンスを経由してルーティングされている場合、ネットワーク遅延は測定されません。
  • 拡張ネットワーク スタック (ENS) は、vNIC から 物理 NIC、物理 NIC から vNIC、vNIC から vNIC への遅延に対応していません。
  • East-West ネットワーク トラフィックの保護がパートナー サービス仮想マシンを使用して構成されている場合、遅延測定はサポートされません。サービス仮想マシン (SVM) とゲスト仮想マシンのポートでは、遅延のモニタリングは無効になっています。

遅延データを外部のネットワーク パフォーマンス モニタリング ツールにエクスポートし、データの分析を行うこともできます。外部モニタリング ツールはコレクタともいいます。コレクタを使用すると、ネットワークの可視性を向上させ、ネットワークのパフォーマンスを最適化し、ネットワークの遅延が大きいデータパス内のエンドポイントを特定できます。

ネットワーク遅延の統計を測定するようにホストを構成すると、ホストのネットワーク オペレーション エージェント (netopa) はデータ プレーンを定期的にポーリングします。遅延データが使用可能な場合、エージェントは事前に構成された間隔でデータを外部コレクタにエクスポートします。

注:
  • netopa エージェントは、ネットワーク遅延の統計を vRealize Network Insight (vRNI) にのみエクスポートできます。現在、他のコレクタ ツールはサポートされていません。
  • NSX REST API を使用している場合にのみ、ネットワーク遅延の統計を測定するように ESXi ホストを構成できます。

次のサポート マトリックスは、ネットワーク遅延の統計に対してサポートされるトランスポート ノードとコレクタの概要を示しています。

表 1. サポート マトリックス
ネットワーク遅延の統計 NSX-T Data Center バージョンでの開始 サポートされるトランスポート ノード サポートされるコレクタ コメント

VTEP から VTEP

2.5

ESXi ホスト

vRNI 5.0 以降

物理 NIC から vNIC

vNIC から物理 NIC

vNIC から vNIC

3.0

ESXi ホスト

vRNI 5.3

NSX-T Data Center 3.0.2 以降では、vRNI 5.3 への統計情報のエクスポートがサポートされます。

スタンドアローンの ESXi ホストと、vCenter Server クラスタを構成する ESXi ホストの両方について、ネットワーク遅延の統計を測定できます。ただし、vCenter Server で管理されている ESXi ホストからのネットワーク遅延の統計情報は、vRNI にエクスポートできます。vRNI は、vCenter Server によって管理されていないスタンドアローンの ESXi ホストから遅延の統計情報を収集しません。

物理 NIC から vNIC または vNIC から 物理 NIC への遅延

ホスト トランスポート ノードで物理 NIC の遅延測定が有効になっている場合、ホスト トランスポート ノードの各 vNIC で、vNIC から物理 NIC の遅延や物理 NIC から vNIC への遅延が計算されます。


この図は、単一ホストでの物理 NIC から vNIC または vNIC から物理 NIC への遅延を表しています。

物理 NIC から vNIC、または vNIC から 物理 NIC 遅延の統計情報は、次の形式で外部コレクタにエクスポートされます。

Endpoint1, Endpoint2, Max, Min, Avg
ここで:
  • Endpoint1、Endpoint2 は、仮想インターフェイス ID (VIF ID) または ESXi ホスト (vmnic) 上の物理アダプタの名前のいずれかになります。
  • MaxMinAvg は、2 つのエンドポイント間の最大遅延、最小遅延、平均遅延をミリ秒単位で表しています。

vNIC から vNIC の遅延

この遅延は、データ パケットが送信元の vNIC から宛先の vNIC に移動する所要時間を表します。これは、同じ ESXi ホスト上にある場合も、異なる ESXi ホスト上にある場合もあります。vNIC が異なる ESXi ホスト上にある場合、ホスト間のオーバーレイ トンネルでは、GENEVE カプセル化プロトコルのみがサポートされます。


この図は、仮想マシン間で発生する vNIC から vNIC への遅延を表しています。仮想マシンが同じホスト上にある場合と異なるホスト上にある場合の遅延を示しています。
vNIC から vNIC へのネットワーク遅延は次のように計算されます。
  • VM1 の送信元 (VNIC1) と VM2 の宛先 (VNIC2) が同じホスト上にある場合は、トリップごとに 1 回のトリップの遅延が計算され、コレクタにエクスポートされます。つまり、VNIC1 から VNIC2 へのトリップと VNIC2 から VNIC1 へのトリップの遅延が個別に計算されます。
  • VM1 の送信元 (VNIC1) と VM2 の宛先 (VNIC2) が異なるホスト上にある場合は、ラウンドトリップの合計が計算され、1 つの遅延測定値がコレクタにエクスポートされます。VNIC2 から VNIC1 へのリターン トラフィックがない場合、ネットワークの遅延はコレクタにエクスポートされません。
注: NSX-T Data Center は、GENEVE でカプセル化されたパケットのタイムスタンプを使用して、ホスト間の vNIC から vNIC への遅延を直接計算します。ホストの物理 NIC の遅延測定と VTEP 間の遅延を有効にする必要はありません。物理 NIC から vNIC、vNIC から 物理 NIC、VTEP から VTEP への統計情報は、vNIC から vNIC への統計から独立しています。

vNIC から vNIC の遅延の統計情報は、次の形式で外部コレクタにエクスポートされます。

VIF1, VIF2, Max, Min, Avg
ここで:
  • VIF1, VIF2 は、仮想インターフェイスまたは vNIC を表します。
  • MaxMinAvg は、2 つの vNIC 間の最大遅延、最小遅延、平均遅延をミリ秒単位で表しています。

VTEP から VTEP の遅延

この遅延は、データ パケットが送信元の VTEP から宛先の VTEP に届くまでにかかるラウンドトリップの合計時間を表します。VTEP から VTEP の遅延を測定するには、トランスポート ゾーン プロファイルの遅延を有効にする必要があります。


この図は、ホスト間の VTEP から VTEP の遅延を示しています。

ESXi ホスト間で発生する VTEP から VTEP の遅延を計算する場合、双方向フロー検出 (BFD) が使用されます。NSX-T Data Center は、VTEP 間の遅延の計算をサポートするため、ペイロードのタイムスタンプを使用して BFD プロトコルを拡張します。VTEP から VTEP の遅延を計算するため、ホスト間の各トンネルで BFD パケットが定期的に送信されます。