ダウンタイムの短縮アップグレードは、vCenter Server をメジャーおよびマイナー バージョン間でアップグレードする移行ベースのアプローチであり、理想的なネットワーク、CPU、メモリ、ストレージ条件下でダウンタイムを 5 分未満に短縮します。

単一の自己管理 vCenter Server インスタンス、別の vCenter Server によって管理されている vCenter Server インスタンス、vCenter HA が有効になっている vCenter Server インスタンス、拡張リンク モード構成で接続された vCenter Server インスタンスに対してダウンタイムの短縮アップグレードを実行できます。

サポートされているアップグレード パス

ソース バージョン ターゲット バージョン
vSphere 8.0 vSphere 8.0 Update 2 以降
vSphere 8.0 Update 1 vSphere 8.0 Update 2 以降
vSphere 8.0 P02 vSphere 8.0 Update 2 以降
vSphere 8.0 Update 2 vSphere 8.0 Update 2 より後のリリース
vSphere High Availability (vSphere HA) を備えた vSphere 8.0 Update 2
注： ダウンタイムの短縮アップグレードは、vSphere 8.0 Update 2 より前のバージョンの vCenter HA クラスタと、手動で構成された vCenter HA クラスタでは使用できません。
vSphere 8.0 Update 3 以降のリリース。

ダウンタイムの短縮アップグレード プロセスについて

ダウンタイムの短縮アップグレード プロセスでは、移行ベースのアプローチが使用されます。このアプローチでは、新しい vCenter Server Appliance がデプロイされ、そこに現在の vCenter Server のデータと構成がコピーされます。ダウンタイムの短縮アップグレードは、GUI インストーラを使用した現在の vCenter Server アップグレード プロセスに代わるものではありません。

ダウンタイムの短縮アップグレード プロセスでは、ソース vCenter Server Appliance とすべてのリソースはオンラインのままです。ダウンタイムは、ソース vCenter Server Appliance が停止され、構成がターゲット vCenter Server に切り替わり、サービスが開始されるときに発生します。ネットワーク、CPU、メモリ、ストレージの理想的なプロビジョニング下では、ダウンタイムは 5 分未満になることが想定されます。

ダウンタイムの短縮アップグレードの大まかな手順は次のとおりです。
  1. リポジトリ URL を構成します。
    注： この手順は、vSphere 8.0 Update 2 よりも前のバージョンから vSphere 8.0 Update 2 にアップグレードする場合に実行します。

    vSphere 8.0 Update 2 からそれ以降のバージョンにアップグレードする場合は、手順 2 に進みます。

  2. ISO ファイルをダウンロードしてマウントします。
  3. ソース vCenter Server Appliance のバックアップがあることを確認します。
  4. vCenter Server Lifecycle Manager サービス プラグインをアップグレードし、事前チェックを実行します。
  5. ターゲット vCenter Server Appliance を構成します。
  6. アップグレードを準備し、ターゲット vCenter Server Appliance に切り替えます。
プロセスのすべての段階で事前チェックが実行されます。問題が発生した場合は、問題を解決してからアップグレード手順を再試行します。アップグレードがキャンセルされた場合、またはいずれかの段階でエラーが発生した場合、構成はソース vCenter Server インスタンスに戻ります。アップグレード プロセスが完了し、ターゲット vCenter Server が実行中になるまで、ソース vCenter Server インスタンスはシャットダウンしません。
注： 失敗した場合、アップグレード プロセスは自動的にキャンセルされ、構成はソース vCenter Server インスタンスに戻ります。vCenter Lifecycle プラグインは元に戻りません。

リポジトリ URL の構成

ISO イメージのソースとしてデフォルトまたはカスタムのリポジトリ URL を使用するように vCenter Server Appliance を構成できます。デフォルトでは、URL ベースのパッチ適用に使用されるリポジトリは、デフォルトの VMware リポジトリ URL です。

vCenter Server がインターネットに接続されていない場合、またはセキュリティ ポリシーがインターネットへの接続を許可していない場合は、カスタム リポジトリをビルドして設定できます。カスタムのリポジトリは、データセンター内のローカル Web サーバ上で実行され、データをデフォルトのリポジトリからレプリケートします。
注： vSphere 8.0 Update 2 よりも前のバージョンから vSphere 8.0 Update 2 にアップグレードする場合は、この手順を実行する必要があります。

前提条件

vCenter Server Appliance アプライアンス管理インターフェイスにルートとしてログインします。

手順

  1. カスタム リポジトリ URL を設定する場合、リポジトリをローカル Web サーバに構築します。
    1. https://customerconnect.vmware.com/downloads/#all_productsで VMware Customer Connect にログインします。
    2. VMware vSphere で [製品のダウンロード] を選択します。
    3. [バージョンの選択] ドロップダウンで vCenter Server のバージョンを選択します。
    4. 使用しているライセンス タイプに対して、VMware vCenter Server の行で [ダウンロードに移動] をクリックします。
    5. [VMware vCenter Server Appliance Update Bundle] ZIP ファイルをダウンロードします。
    6. MD5 チェックサム ツールを使用して、md5sum が正しいことを確認します。
    7. Web サーバ上でルートの下にリポジトリ ディレクトリを作成します。
      たとえば、 vc_update_repo ディレクトリを作成します。
    8. ZIP ファイルをそのリポジトリ ディレクトリに解凍します。
      解凍されたファイルは manifest および package-pool サブディレクトリに配置されます。
  2. vCenter Server 管理インターフェイスで、[更新] をクリックします。
  3. [[設定]] をクリックします。
  4. リポジトリの設定を選択します。
    オプション 説明
    デフォルト アプライアンスのビルド プロファイルに事前設定されている、デフォルトの VMware リポジトリ URL を使用します。
    指定済み カスタム リポジトリを使用します。リポジトリ URL を入力する必要があります。たとえば、https://web_server_name.your_company.com/vc_update_repo のように入力します。

    リポジトリ URL では、HTTPS や FTPS などの安全なプロトコルを使用する必要があります。
  5. （オプション） 指定したリポジトリで認証が要求される場合は、ユーザー名とパスワードを入力します。
  6. セキュリティ証明書を確認しない場合は、[証明書を確認する] チェック ボックスをオフにします。
    リポジトリの URL を信頼する場合は、リポジトリ URL の証明書の確認をバイパスすることができます。
  7. [保存] をクリックします。

    [現在のバージョンの詳細] ペインで、vCenter Server のバージョンおよびビルド番号を確認できます。

ISO イメージのダウンロードとマウント

VMware は、vCenter Server Appliance のインストーラを含む vCenter Server Appliance ISO イメージをリリースしています。

  • ISO イメージを、vCenter Server 仮想マシンまたは管理 vCenter Server に接続されているコンテンツ ライブラリまたはデータストアにダウンロードします。
  • この ISO イメージを vCenter Server 仮想マシンの CD-ROM デバイスにマウントします。

前提条件

  • https://my.vmware.com/web/vmware/ で Customer Connect アカウントを作成します。
  • 次の権限があることを確認します。
    • 仮想マシンに対する [Virtual machine .Interaction.Configure CD media]。
    • インストール メディア ISO イメージをアップロードするデータストアに対する [Datastore.Browse datastore]。
    • インストール メディア ISO イメージをアップロードするデータストアに対する [Datastore.Low level file operations]。

手順

  1. VMware Customer Connect にログインします。
  2. [製品とアカウント] > [すべての製品] の順に移動します。
  3. VMware vSphere を見つけて、[ダウンロード コンポーネントの表示] をクリックします。
  4. [バージョンの選択] ドロップダウンから VMware vSphere のバージョンを選択します。
  5. VMware vCenter Server のバージョンを選択して、[ダウンロードに移動] をクリックします。
  6. vCenter Server Appliance ISO イメージをダウンロードします。
  7. vCenter Server インベントリで仮想マシンを右クリックし、[設定の編集] を選択します。
  8. [CD/DVD ドライブ] を展開し、[データストア ISO ファイル] をドロップダウン メニューから選択します。
    [ファイルの選択] ダイアログ ボックスが開きます。
  9. ダウンロードしたファイルを参照して選択し、[OK] をクリックします。
  10. [仮想デバイス ノード] ドロップダウン メニューから、仮想マシンでドライブが使用するノードを選択します。
  11. 仮想マシンがパワーオンされるときにデバイスを接続するには、[パワーオン時に接続] を選択します。
  12. [OK] をクリックします。
  13. [仮想マシンのハードウェア] パネルを展開し、データストア ISO ファイルの隣にある [接続中] アイコンをクリックしてデバイスを接続します。

vCenter Lifecycle プラグインのアップグレード

ISO イメージをダウンロードしてマウントしたら、vCenter Lifecycle プラグインをアップグレードします。

  • アップグレードを同時に実行することはできません。
  • vSphere 8.0 Update 2 より前のバージョンからアップグレードする場合は、手順 3 ～ 5 を実行します。
  • vSphere 8.0 Update 2 以降のバージョンからアップグレードする場合は、ISO ファイルをマウントして、プラグインをアップグレードします。

前提条件

  • ISO イメージのダウンロードとマウントが済んだことを確認します。ISO イメージのダウンロードとマウントを参照してください。
  • root として vCenter Server 管理インターフェイスにログインします。

手順

  1. vSphere Client で、アップグレードする vCenter Server を選択します。
  2. [アップデート] タブで [Update Planner] をクリックします。
  3. [アップグレード後のバージョン] と [バージョンの選択] をクリックします。
  4. バージョンを選択して、[OK] をクリックします。
  5. [次へ] をクリックします。
  6. [バックアップ] で、vCenter Server をバックアップ済みであることを示すチェック ボックスを選択します。
    バックアップが一覧表示されます。
  7. [プラグインのアップグレード] で [プラグインのアップグレード] を選択して、vCenter Lifecycle サービス プラグインを更新します。
    プラグインをアップグレードすると、ISO ファイルから、アップグレード後のバージョンのユーザー インターフェイスが再ロードされます。
  8. [次へ] をクリックして、ターゲット vCenter Server Appliance の構成に進みます。
    注意: アップグレードが完了する前に [次へ] をクリックすると、プラグインがクラッシュすることがあります。進行状況バーが 100% に達するまで待機してから、 [次へ] をクリックします。
  9. [事前チェックを実行] をクリックしてソースの事前チェックを実行し、[次へ] をクリックします。
  10. （オプション） [破棄] をクリックしてアップグレード ワークフローを破棄し、ISO ファイルのマウント手順に戻ります。vCenter Lifecycle プラグインは元に戻りません。

ターゲット vCenter Server Appliance の構成

vCenter Lifecycle サービス プラグインの更新が完了したら、ターゲット vCenter Server Appliance を構成します。

アップグレード後、ターゲット vCenter Server の IP アドレスと ID はソース vCenter Server と同じになります。

手順

  1. [アップグレード] で、[ターゲット アプライアンス] セクションに移動します。
  2. [ターゲット アプライアンスの構成] をクリックします。
    [ターゲット仮想マシンのデプロイ] ウィザードが表示されます。
  3. 使用許諾契約書を読んで同意し、[次へ] をクリックします。
  4. [VMware カスタマー エクスペリエンス向上プログラム (CEIP)] 画面を参照し、プログラムへの参加を希望するかどうかを選択します。
    CEIP の詳細については、『 vCenter Server およびホスト管理』の「カスタマー エクスペリエンス向上プログラムの構成」セクションを参照してください。
  5. [次へ] をクリックします。
  6. ソース vCenter Server が別の vCenter Server によって管理されている場合は、場所の詳細を入力します。
    ソース vCenter Server のコンテナの場所、HTTPS ポート、ユーザー名、パスワードを入力します。
  7. ソース vCenter Server の証明書を表示して受け入れ、[次へ] をクリックします。
  8. ターゲット vCenter Server Appliance をデプロイする場所を選択し、[次へ] をクリックします。
    ターゲット vCenter Server Appliance は、ソース アプライアンスと同じ場所にデプロイすることも、別の場所を選択することもできます。別の場所を選択する場合、ターゲットの場所は vCenter Server が異なる必要があり、 vCenter Server のホスト名または IP アドレス、HTTPS ポート、ユーザー名、パスワードなどの接続の詳細を入力する必要があります。
    ソース vCenter Server Appliance と同じ場所にターゲットをデプロイすることを選択した場合は、 [デプロイ タイプ] 画面が表示されます。
  9. ターゲット vCenter Server に別の場所を選択する場合は、証明書を表示して受け入れ、[次へ] をクリックします。
  10. ターゲット vCenter Server Appliance のデプロイ タイプを選択し、[次へ] をクリックします。
    ソースと同じ構成でターゲット vCenter Server Appliance をデプロイする場合は、 [同じ構成] を選択します。
    ターゲット アプライアンスのすべての構成パラメータを入力する場合は、 [詳細な構成] を選択します。
    1. ターゲット vCenter Server Appliance をデプロイするデータセンターまたは仮想マシン フォルダを入力します。
    2. ターゲットのデプロイに必要なコンピューティング リソースを選択します。
    3. [次へ] をクリックします。
  11. ターゲット仮想マシン アプライアンスの詳細を構成し、[次へ] をクリックします。
    仮想マシン名を入力し、一時 root パスワードを設定、確認します。
  12. ターゲット vCenter Server のデプロイ サイズとストレージ サイズを選択して、[次へ] をクリックします。
  13. デプロイ用のデータストアを選択し、[次へ] をクリックします。
    必要に応じて、シン プロビジョニングを有効にします。
  14. [ネットワーク設定] 画面で、固定デプロイに使用するターゲット vCenter Server の一時 IP アドレスを入力します。
    この IP アドレスは、ターゲット vCenter Server Appliance のデプロイ中、アップグレード中、および切り替え時に使用されます。
    一時 IP アドレス モードが DHCP の場合は、IP アドレスを入力する必要はありません。
  15. [確認] 画面で構成を確認し、[終了] をクリックします。
    [アップグレード] ウィンドウの下に [ターゲット アプライアンス] セクションが表示されます。
  16. 設定を変更するには、[設定の編集] をクリックし、必要な変更を行います。
  17. [次へ] をクリックして、アップグレードと切り替えを続行します。
  18. [破棄] をクリックしてアップグレード ワークフローを破棄し、ISO ファイルのマウント手順に戻ります。vCenter Lifecycle プラグインは元に戻りません。
    アップグレードの進行中は、構成を破棄できません。

ターゲット vCenter Server Appliance へのアップグレードと切り替えの準備

ターゲット vCenter Server Appliance の構成が済んだら、サービスのアップグレードと切り替えを実行できます。

アップグレードと切り替えは 2 段階で実行されます。最初のステージは準備ステージです。アップグレードが初期化され、入力した構成でターゲット vCenter Server Appliance が作成されます。このステージでは、ソース マシンのデータがターゲット マシンにレプリケートされます。このプロセスにかかる時間は環境と vCenter Server の使用状況によって異なります。2 番目のステージは切り替えステージです。ターゲット vCenter Server Appliance がソースの ID を取得します。切り替え中に、短時間のダウンタイムが発生します。切り替えは手動と自動のいずれかを選択できます。

手順

  1. [Update Planner] で、[アップグレード] セクションに移動します。
  2. 実行する切り替えのタイプを選択します。
    • 手動切り替え。このオプションは、ターゲット vCenter Server Appliance に手動で切り替える場合に選択します。選択した構成でターゲット アプライアンスが作成された後、切り替えをトリガするために [切り替え] をクリックする必要があります。
    • 自動切り替え。このオプションを選択すると、選択した構成でターゲット アプライアンスが作成された後に、続けて切り替えが自動的に行われます。
  3. [アップグレードの開始] をクリックします。
    準備ステージの進行状況を確認できます。準備ステージが完了して切り替えが開始されると、切り替えステージのステータスを確認できます。
    切り替えが完了すると、ターゲット vCenter Server Appliance にログインできます。
  4. [vSphere Client を開く] をクリックしてログインします。
    アップグレードに失敗すると、構成がソース vCenter Server Appliance に戻ります。