vCenter Server は、実行中またはサスペンド状態の仮想マシンを移行する前に、互換性チェックを実行し、仮想マシンがターゲット ホストと互換性があることを確認します。

vMotion は、実行中の状態の仮想マシンを、基盤となる ESXi システム間で転送します。ライブ移行を行うには、移行前のソース ホストのプロセッサが提供する命令セットと同じものを、ターゲット ホストのプロセッサが移行後の仮想マシンに提供することが必要です。クロック速度、キャッシュ サイズ、コア数はソース プロセッサとターゲット プロセッサ間で異なっても構いません。ただし、vMotion 互換であるためには、プロセッサが同一ベンダー (AMD または Intel) であることが必要です。

サスペンド状態の仮想マシンの移行でも、同等の命令を使用して、ターゲット ホストで仮想マシンの実行をレジュームできる必要があります。

vMotion を使用した移行またはサスペンド状態の仮想マシンの移行を開始するときには、[仮想マシンの移行] ウィザードで、ターゲット ホストの互換性を確認します。互換性の問題により移行できない場合には、ウィザードにエラー メッセージが表示されます。

仮想マシンで実行中のオペレーティング システムとアプリケーションが使用できる CPU の命令セットは、仮想マシンがパワーオンするときに決定されます。この CPU の機能セットは、次の項目に基づいています。

  • ホスト CPU ファミリーとモデル
  • CPU の機能を無効にする可能性のある BIOS の設定
  • ホストで実行中の ESXi のバージョン
  • 仮想マシンの互換性の設定
  • 仮想マシンのゲスト OS

異なる CPU 機能セットを持つホスト間での CPU の互換性を向上させるために、ホストを Enhanced vMotion Compatibility (EVC) クラスタに置いて、ホスト CPU の機能の一部を仮想マシンから隠すことができます。EVC の詳細については、「Enhanced vMotion Compatibility について」を参照してください。

注:

仮想マシンにカスタムの CPU 互換性マスクを適用することによって仮想マシンからホスト CPU の機能を隠すこともできますが、この方法は推奨しません。VMware は、CPU ベンダーやハードウェア ベンダーとのパートナーシップを通じて、広範なプロセッサ全体で vMotion の互換性を維持できるよう努力しています。詳細については、VMware のナレッジ ベースの記事 「vMotion and CPU Compatibility FAQ (vMotion および CPU の互換性に関する FAQ)」 を参照してください。

vSphere vMotionと CPU の互換性シナリオ

EVC を使用しない場合、vCenter Server の CPU 互換性チェックでホストのユーザーレベル機能に不一致が検出されれば、仮想マシン自体がそれらの機能を利用するかどうかにかかわらず、移行はブロックされます。ただし、ホストのカーネルレベルの機能に不一致がある場合は、仮想マシンがターゲット ホストにない機能を利用する場合に限り移行がブロックされます。

vCenter Server の CPU 互換性チェックでは、ソース ホストで利用可能な CPU 機能、仮想マシンが利用可能な機能のサブセット、およびターゲット ホストで利用可能な機能を比較します。

ユーザー レベルの機能は、仮想マシンのアプリケーションで使用される、権限のない命令です。これには、SSE3、SSSE3、SSE4.1、SSE4.2、および AES が含まれます。これらは仮想化レイヤーをバイパスするユーザー レベルの命令であるため、vMotion で移行したあとに一致しないと、アプリケーションが不安定になる場合があります。

カーネル レベルの機能は、仮想マシンのオペレーティング システムで使用される、権限を持つ命令です。これには、AMD No eXecute (NX) および Intel eXecute Disable (XD) というセキュリティ機能が含まれます。

vMotion で仮想マシンを移行しようとするときは、次のシナリオのいずれかが適用されます。

  • ターゲット ホストの機能セットは、仮想マシンの CPU 機能セットと一致します。CPU の互換性要件を満たしており、vMotion での移行が進行します。
  • 仮想マシンの CPU 機能セットに、ターゲット ホストでサポートされていない機能が含まれています。CPU の互換性要件を満たしておらず、vMotion での移行は進行できません。
    注: EVC は、クラスタ内で実行しているすべての仮想マシンに対して「ベースライン」機能を提供することで、このような互換性のない状態を克服します。このベースライン機能セットにより、クラスタ化されたホストの CPU の差異は、仮想マシンから隠されます。
  • ターゲット ホストは、仮想マシンの機能セットに加えて、仮想マシンの機能セットに含まれていない追加のユーザーレベルの機能(SSE4.1 など)をサポートしています。CPU の互換性要件を満たしておらず、vMotion での移行は進行できません。
    注: このような種類の非互換性は、EVC クラスター内のホスト間の移行では無視されます。
  • ターゲット ホストは、仮想マシンの機能セットに加えて、仮想マシンの機能セットに含まれていない追加のカーネルレベルの機能(NX や XD など)をサポートします。CPU の互換性要件を満たしており、vMotion での移行が進行します。仮想マシンはパワーオンされている間、自分自身の CPU 機能セットを保持しており、元のホストに自由に移行して戻すことができます。ただし、仮想マシンが再起動すると、新しいホストから新しい機能セットが取得されます。このプロセスにより、仮想マシンを元のホストに戻そうとした場合に、vMotion の非互換が発生することがあります。

vSphere vMotion に対する CPU ファミリと機能セットの互換性

プロセッサは、ファミリにグループ化されます。通常、同じファミリに含まれるプロセッサの機能セットは似ています。

プロセッサ ベンダーは、プロセッサ ファミリを定義します。同じファミリ内の異なるプロセッサ バージョンは、プロセッサのモデル、ステッピング レベル、拡張機能を比較することで区別できます。場合によっては、プロセッサ ベンダーが、同じプロセッサ ファミリ内で大幅なアーキテクチャ変更(SSSE3 命令、SSE4.1 命令、NX/XD CPU セキュリティ機能など)を行うことがあります。

デフォルトでは、vCenter Server は、アプリケーションが利用可能な機能の不一致を非互換とみなすことによって、vMotion を使用して移行した後の仮想マシンの安定性を保証します。

サーバ ハードウェアの CPU の仕様書には、通常、vMotion の互換性に影響を与える機能が CPU に搭載されているかどうかが記載されています。

Intel プロセッサとその機能の識別の詳細については、Intel 社から入手できる、『インテル® プロセッサの識別と CPUID 命令:アプリケーション ノート 485』を参照してください。AMD プロセッサおよびその機能の識別については、『CPUID Specification』を参照してください(AMD 社から入手可能)。

CPU 互換性マスクと vSphere vMotion

CPU の互換性マスクを使用して、仮想マシンが参照できる CPU 機能をカスタマイズできます。

vCenter Server は、仮想マシンが使用できる CPU 機能をターゲット ホストの CPU 機能と比較して、vMotion での移行を許可するかどうかを決定します。

vMotion を使用した移行後に仮想マシンの安定性を確保するために、VMware は、CPU 互換性マスクのデフォルト値を設定しています。

CPU 互換性またはゲスト OS 機能(NX/XD など)を選択できる場合には、VMware は個々の仮想マシンを構成するためのチェックボックス オプションを提供しています。構成オプションには、仮想マシンの CPU の [詳細設定] オプションからアクセスできます。表示される CPU 機能を細かく制御するには、仮想マシンの CPU 互換性マスクをビット レベルで編集することができます。

注意: CPU 互換性マスクを変更すると、構成がサポート対象外になる可能性があります。VMware サポートや VMware ナレッジベースの記事で指示されていないかぎり、CPU 互換性マスクを手動で変更しないでください。

CPU の互換性マスクは、どのような状況であっても、仮想マシンがマスクされた CPU 機能にアクセスするのを妨げることができません。場合によっては、ゲスト OS から隠されていても、マスクされている機能をアプリケーションが検出および使用することがあります。さらに、あらゆるホストで、CPUID 命令を使用するのではなく、サポートされていない CPU 機能の検出方法を使用するアプリケーションは、マスクされている機能にアクセスできます。サポートされていない CPU 検出方法を使用するアプリケーションを実行している仮想マシンは、移行後に、安定した動作をしないことがあります。

Enhanced vMotion Compatibility

EVC (Enhanced vMotion Compatibility) 機能を使用すると、クラスタ内のホスト全体で vMotion の互換性を維持できるようになります。実際の CPU が異なる場合でも、クラスタ内のすべてのホストが同じ CPU 機能セットを仮想マシンに確実に提供します。EVC を使用すると、CPU の互換性の問題が原因で、vMotion による移行の失敗がなくなります。

クラスタ設定ダイアログ ボックスで EVC を設定します。EVC は、クラスタのすべてのホスト プロセッサがベースライン プロセッサの機能セットを提供するように設定します。このベースライン機能セットを、EVC モードと呼びます。EVC は、AMD-V Extended Migration テクノロジー(AMD ホストの場合)および Intel FlexMigration テクノロジー(Intel ホストの場合)を使用してプロセッサ機能をマスクし、ホストが以前の世代のプロセッサ機能セットを提供できるようにします。EVC モードは、クラスタ内で最小の機能セットを持つホストの機能セットと同等か、そのサブセットにする必要があります。

EVC は、vMotion の互換性に影響を与えるプロセッサ機能のみをマスクします。EVC を有効にしても、より高速なプロセッサの利用、CPU コア数の増加、または最新のホストで利用可能なハードウェア仮想化のサポートといったメリットを仮想マシンは活用できます。

仮想マシンは、いかなる場合でもマスクされた CPU 機能にアクセスでき、EVC はこれを止めることはできません。CPU ベンダーが推奨する機能の検出方法に準拠していないアプリケーションは、EVC 環境で予期しない動作をすることがあります。VMware EVC は、CPU ベンダーの推奨に従わず、正常でない動作をするアプリケーションをサポートできません。正常に動作するアプリケーションの作成については、VMware のナレッジベースの記事「Detecting and Using New Features in CPUs」を参照してください。

vSphere 7.0 Update 1 以降では、仮想共有グラフィック アクセラレーション (vSGA) の EVC 機能を利用できます。vSGA を使用すると、複数の仮想マシンで ESXi ホストにインストールされている GPU を共有し、3D グラフィック アクセラレーション機能を利用できます。

ホストの Enhanced vMotion Compatibility 要件

異なる CPU 機能セットを持つホスト間での CPU の互換性を向上させるために、ホストを Enhanced vMotion Compatibility (EVC) クラスタに置いて、ホスト CPU の機能の一部を仮想マシンから隠すことができます。EVC クラスタのホストと既存の EVC クラスタに追加するホストは EVC 要件を満たしている必要があります。

  • 有効にする EVC モードよりも優れた機能セットを持つホストで実行されているクラスタ内のすべての仮想マシンがパワーオフされている。また、これらの仮想マシンをクラスタから移行することもできます。

  • クラスタ内のすべてのホストは、次の要件を満たしている必要があります。

要件

説明

サポートされる ESXi バージョン

ESXi6.7 以降。

vCenter Server

ホストが vCenter Server システムに接続されている必要があります。

CPU

単一のベンダー (AMD または Intel)。

高度な CPU 機能の有効化

BIOS で次の CPU 機能を有効にします (使用できる場合)。

  • ハードウェア仮想化のサポート (AMD-V または Intel VT)

  • AMD No eXecute (NX)

  • Intel eXecute Disable (XD)

注:

ハードウェアのベンダーによっては、BIOS の特定の CPU 機能がデフォルトで無効な場合があります。EVC 互換性チェックで、特定の CPU に備わっているはずの機能が検出できず、EVC を有効にする際に問題が発生することがあります。互換プロセッサのシステムで EVC を有効にできない場合は、BIOS ですべての機能が有効であることを確認します。

有効にする EVC モードに対応した CPU

特定のプロセッサまたはサーバ モデルについて EVC サポートを確認するには、VMware 互換性ガイド (http://www.vmware.com/resources/compatibility/search.php) を参照してください。

vMotion 用の構成

vSphere vMotionのホスト構成を参照してください。

既存のクラスタで vSphere EVC を有効にする方法

既存のクラスタで vSphere Enhanced vMotion Compatibility (EVC) を有効にして、クラスタ内のホスト間で vMotion CPU の互換性を確保する方法について説明します。vSphere DRS や vSphere HA などの他のクラスター機能は、EVC と完全な互換性があります。

前提条件

クラスタ内のホストが ホストの Enhanced vMotion Compatibility 要件の一覧にある要件を満たしていることを確認します。

手順

  1. vSphere インベントリでクラスタを選択します。
  2. EVC モードよりも優れた機能セットを持つホスト上で、すべての仮想マシンをパワーオフします。
    クラスタ内のホストにあるすべての仮想マシンの EVC モードを確認するには、 仮想マシンの EVC モードを決定する方法を参照してください。EVC モードを使用しないか、クラスタで有効にする EVC モードよりも上位の EVC モードを使用して、パワーオン状態のすべての仮想マシンをパワーオフする必要があります。
  3. [構成] タブをクリックして VMware EVC を選択し、[編集] をクリックします。
  4. クラスタのホストに該当する CPU ベンダーと機能セットの EVC を有効にして、[OK] をクリックします。

クラスタの vSphere EVC モードを変更する方法

クラスタ内のホスト間の仮想マシン移行が CPU 機能に互換性がないせいで失敗することのないよう、vSphere EVC を構成する方法について説明します。

いくつかの EVC アプローチで CPU 互換性を確保できます。

  • クラスタ内のすべてのホストが新しい EVC CPU または Graphics (vSGA) モードと互換性がある場合、既存の EVC クラスタの EVC CPU または Graphics (vSGA) モードを変更できます。

  • EVC が有効になっていないクラスタの EVC を有効にできます。

  • より多くの CPU 機能を公開するように EVC モードを上げるができます。

  • CPU 機能を隠して互換性を高くするために EVC モードを下げることができます。

前提条件

  • クラスタのすべてのホストに、有効にする EVC モードに対応した CPU が搭載されていることを確認します。サポートされている CPU のリストについては、ナレッジベースの記事 KB1003212 を参照してください。

  • クラスタ内のすべてのホストが vCenter Server に接続されていて登録されていることを確認します。切断されたホストをクラスター内に含めることはできません。

  • EVC モードの変更内容に応じて、仮想マシンは次のパワー状態になっている必要があります。

    EVC モード

    仮想マシン パワー アクション

    機能の多い CPU ベースラインに EVC モードを上げます。

    実行中の仮想マシンのパワーオン状態は保持されます。新しい EVC モード機能は、パワーオフしてから再度パワーオンするまで仮想マシンで使用できません。完全にパワーオフしてパワーオンすることが必要です。ゲスト OS の再起動、または仮想マシンのサスペンドおよびレジュームでは不十分です。

    ヒント:

    vmx.reboot.powerCycle 仮想マシン パラメータを TRUE に設定すると、ゲスト OS の再起動時に仮想マシンの電源を入れ直すよう構成することができます。仮想マシンが再度パワーオンされると、この構成パラメータは削除されます。仮想マシンの構成設定を編集するには、VMware Host Client を使用します。『vSphere の単一ホスト管理:VMware Host Client』ガイドの「VMware Host Client での構成ファイル パラメータの編集」トピックを参照してください。VMware PowerCLI を使用してこのパラメータを仮想マシンのグループに設定する方法については、VMware vSphere Blog の投稿を参照してください。

    機能の少ない CPU ベースラインに EVC モードを下げます。

    仮想マシンがパワーオン状態になっていて、有効にする EVC モードよりも高いモードで実行されている場合は、仮想マシンをパワーオフします。

    注:

    EVC クラスタ内の仮想マシンのスナップショットを作成する場合は、次の使用事例に留意してください。

    • EVC のダウングレード前に実行中の仮想マシンのスナップショットを作成した場合、EVC のダウングレード後にそのスナップショットに戻すと失敗し、仮想マシンはサスペンド状態のままになります。
    • EVC のアップグレード前に仮想マシンのスナップショットを作成した場合は、EVC のアップグレードの前または後にそのスナップショットに戻すことができます。

    仮想マシンの EVC モードを確認するには、仮想マシンの EVC モードを決定する方法 を参照してください。

手順

  1. インベントリでクラスタを選択します。
  2. [設定] タブをクリックします。
  3. [構成][VMware EVC] を選択し、[編集] をクリックします。
  4. [EVC モードの変更] 画面で、EVC を有効にするか無効にするかを選択します。

    オプション

    説明

    EVC を無効化

    EVC 機能が無効になります。該当するクラスタのホストに対して、CPU の互換性が保持されません。

    AMD ホスト用に EVC を有効化

    EVC 機能が、AMD のホストに対して有効になります。

    Intel ホスト用に EVC を有効化

    EVC 機能が、Intel のホストに対して有効になります。

  5. [CPU モード] ドロップダウン メニューから、クラスタに対して有効にする、ベースラインの CPU 機能セットを選択します。

    EVC CPU モードを選択できない場合は、[互換性] ペインに、原因と各原因に関連するホストが表示されます。

  6. (オプション) [グラフィック モード (vSGA)] ドロップダウン メニューで、ベースライン グラフィック機能セットを選択します。

    EVC vSGA モードを選択できない場合は、[互換性] ペインに、原因と各原因に関連するホストが表示されます。

    オプション

    説明

    ベースライン グラフィック

    Direct3D 10.1/OpenGL 3.3 が提供する機能を含むベースライン グラフィック機能セットを適用します。

    注:

    Direct3D 10.1/OpenGL 3.3 が提供する機能を含むベースライン グラフィック機能セットを適用するように vSGA モードを構成するには、仮想マシンが ESXi 6.5 以降のバージョンと互換性がある必要があります。

    D3D 11.0 クラスの機能

    Direct3D 11.0/OpenGL 4.3 が提供する機能を含むベースライン グラフィック機能セットを適用します。

    注:

    クラスタを作成するときに、EVC グラフィック モードの Direct3D 11.0/OpenGL 4.3 クラス機能を有効にすると、Direct3D 11.0/OpenGL 4.3 をサポートする ESXi 8.0 ホストのみをクラスタに追加できます。Direct3D 11.0/OpenGL 4.3 をサポートしない ESXi 8.0 ホストをクラスタに追加すると、操作は失敗し、エラー メッセージが表示されます。

  7. [OK] をクリックします。

仮想マシンの EVC モードを決定する方法

仮想マシンをホストに移行してパワーオンする際にこのホストで必要となる CPU 機能およびグラフィック機能は、仮想マシンの EVC モードによって決まります。仮想マシンの EVC モードは、仮想マシンを実行するクラスタで設定された EVC モードとは独立しています。

仮想マシンの EVC モードは、仮想マシンがパワーオンされたときに決定されます。仮想マシンが実行されているクラスタの EVC モードも、仮想マシンがパワーオンされたときに決定されます。実行中の仮想マシンの EVC モードまたは EVC クラスタ全体を有効にした場合、仮想マシンをパワーオフして再びパワーオンするまで、仮想マシンの EVC モードは変更されません。つまり、仮想マシンをパワーオフして再びパワーオンするまで、新しい EVC モードによって表示されている CPU 機能は仮想マシンで使用されません。

例として、Intel プロセッサ搭載のホストを含む EVC クラスタを作成して、EVC モードを Intel「Merom」Generation (Xeon Core 2) に設定する場合を考えます。このクラスタに含まれる仮想マシンをパワーオンすると、Intel Merom Generation (Xeon Core 2) EVC モードで実行されます。クラスタの EVC モードを Intel「Penryn」Generation (Xeon 45 nm Core 2) にしても、仮想マシンは、低い Intel「Merom」Generation (Xeon Core 2) EVC モードのままです。SSE4.1 などの上位の EVC モードの機能セットを使用するには、仮想マシンをパワーオフして、再度パワーオンする必要があります。

手順

  1. vCenter Server インベントリのクラスタまたはホストに移動します。
  2. [仮想マシン] > [仮想マシン] タブをクリックします。
    選択したクラスタまたはホストに配置された、すべての仮想マシンのリストが表示されます。
  3. CPU モードのステータスを確認するには、[EVC CPU モード] 列を調べます。
    1. 列が表示されない場合は、[仮想マシン] テーブルの左下隅にある [列の管理] をクリックします。
      [列を表示] ポップアップが表示されます。
    2. [EVC CPU モード] 列を表示するには、リストから該当するチェック ボックスを見つけて選択します。
    [EVC CPU モード] 列には、クラスタまたはホストに配置されたすべての仮想マシンの CPU モードが表示されます。
    重要: 各仮想マシンの [EVC CPU モード] 列には、仮想マシン レベルで定義されている EVC モードが表示されます。

    ただし、仮想マシンごとの EVC モードが設定されていない場合、仮想マシンでは親 EVC クラスタまたはホストの EVC モードを継承します。その結果、仮想マシンごとの EVC が設定されていないすべての仮想マシンの [EVC CPU モード] 列には、親ホストまたはクラスタから継承された EVC モードが表示されます。

    仮想マシンが EVC クラスタに含まれている場合、 [EVC CPU モード] 列に表示される EVC モードは次の方法で定義されます。
    • 仮想マシンをパワーオンすると、[EVC CPU モード] 列には仮想マシンごとの EVC モードまたはクラスタ レベルの EVC モードのいずれかが表示されます。
      仮想マシンごとの EVC クラスタレベルの EVC 仮想マシンの EVC モード
      アクティベーション済み アクティベーション済み 有効。[EVC CPU モード] 列には、仮想マシンの EVC モードが表示されます。
      Deactivated(非アクティブ) アクティベーション済み 有効。[EVC CPU モード] 列には、EVC クラスタの EVC モードが表示されます。
    • 仮想マシンをパワーオフすると、[EVC CPU モード] 列には仮想マシンごとの EVC モードが表示されます。仮想マシンごとの EVC が無効になっている場合、仮想マシンの [EVC CPU モード] 列は空になります。
    仮想マシンが EVC クラスタに含まれていないときに、仮想マシンごとの EVC が設定されていない場合、 [EVC CPU モード] 列に表示される EVC モードは次の方法で定義されます。
    • 仮想マシンをパワーオンすると、[EVC CPU モード] 列には親ホストの EVC モードが表示されます。
    • 仮想マシンをパワーオフすると、[EVC CPU モード] 列は空になります。
  4. グラフィック モードのステータスを確認するには、[EVC グラフィック モード (vSGA)] 列を調べます。
    1. 列が表示されない場合は、[仮想マシン] テーブルの左下隅にある [列の管理] をクリックします。
      [列を表示] ポップアップが表示されます。
    2. [EVC グラフィック モード (vSGA)] 列を表示するには、リストから該当するチェック ボックスを見つけて選択します。
    [EVC グラフィック モード (vSGA)] 列には、ベースライン グラフィック機能セットが表示されます。ベースライン グラフィックを表示するには、仮想マシンで [3D グラフィックス] を有効にする必要があります。

    仮想マシンでの 3D グラフィックスの構成の詳細については、『vSphere の仮想マシン管理』ドキュメントの「3D グラフィックおよびビデオ カードの構成」を参照してください。

3DNow! を使用しない AMD プロセッサ搭載の ESXi ホストの vMotion 移行

vSphere クラスタ内のホストにさまざまな世代の AMD プロセッサ(3DNow! 命令セットを使用するものと使用しないもの)がある場合、これらのホスト間で仮想マシンを正常に移行することはできません。これらの命令を使用できないようにするには、EVC モードまたは CPU 互換性マスクを使用する必要があります。

新世代の AMD プロセッサには、3DNow! プロセッサ命令が搭載されていません。vCenter Server [AMD Opteron Gen. 3 (no 3DNow!)] EVC モードでは、仮想マシンからの 3DNow! 命令をマスクします。この EVC モードは、AMD Opteron Generation 3 ホストのみを含む EVC クラスタに適用できます。このモードを適用すると、クラスタでは 3DNow! 命令を搭載していない AMD Opteron ホストと vMotion の互換性を維持できます。AMD Opteron Generation 1 ホストまたは AMD Opteron Generation 2 ホストを含むクラスタは、3DNow! 命令を搭載していないホストと vMotion 互換にすることはできません。

前提条件

クラスタに含まれているホストが、AMD Opteron Generation 3 以降のプロセッサを持つホストだけであることを確認します。

手順

  • EVC クラスタに対して [AMD Opteron Gen. 3 (no 3DNow!)] EVC モードを有効にします。
    EVC モードを有効にする手順は、クラスタを作成する場合と、既存のクラスタのモードを有効にする場合とで異なります。また、既存のクラスタにパワーオン状態の仮想マシンがあるかどうかによっても異なります。
    オプション 説明
    クラスタの作成 [新規クラスタ] ウィザードで、AMD ホストの EVC を有効にして、[AMD Opteron Gen. 3 (no 3DNow!)] EVC モードを選択します。
    パワーオン状態の仮想マシンがないクラスタの編集 [クラスタ設定] ダイアログ ボックスで、[VMware EVC] 設定を編集して、[AMD Opteron Gen. 3 (no 3DNow!)] EVC モードを選択します。
    パワーオン状態の仮想マシンがあるクラスタの編集 [AMD Opteron Gen. 3 (no 3DNow!)] EVC モードは、クラスタ内にパワーオン状態の仮想マシンがある場合は有効できません。
    1. クラスタ内の実行中の仮想マシンをすべてパワーオフするか、vMotion を使用してクラスタ外に移行します。

      vMotion を使用して仮想マシンをクラスタ外に移行すると、都合の良いときまで仮想マシンのパワーオフを遅らせることができます。

    2. [クラスタ設定] ダイアログ ボックスで、[VMware EVC] 設定を編集して、[AMD Opteron Gen. 3 (no 3DNow!)] EVC モードを選択します。
    3. クラスタ外に仮想マシンを移行した場合は、それらをパワーオフし、元のクラスタにコールド移行します。
    4. 仮想マシンをパワーオンします。

結果

これで、3DNow! 命令を搭載していない AMD プロセッサを持つホストをクラスタに追加できました。また、クラスタ内の新しいホストと既存ホストとの間で、vMotion の互換性を保持できました。

EVC クラスタの機能詳細の表示方法

EVC クラスタによって表示される機能セットは、特定のタイプのプロセッサの機能セットに対応しています。プロセッサの機能セットは、CPRID 命令を使用して確認可能な一連の機能フラグによって表されます。

EVC クラスタ内のホストによって現在表示されている CPUID 機能のフラグを確認できます。

手順

  1. インベントリでクラスタを選択します。
  2. [設定] タブをクリックします。
  3. [VMware EVC] を選択し、[現在の機能の詳細] を展開します。

結果

この VMware EVC パネルには、EVC がこのクラスタ内のホストについて適用する CPUID 機能のフラグが表示されます。CPUID 機能のフラグに関する情報は、Intel および AMD の Web サイトを参照してください。