vSphere では、仮想マシンの移行とは、vSphere インフラストラクチャ内のリソース間で仮想マシンを移動するプロセスのことです。たとえば、移行を使用することで、仮想マシンが実行されているコンピューティング リソースを変更できます。

コールドまたはホット移行を使用して、あるコンピューティング リソースまたはストレージの場所から別の場所に仮想マシンを移動することができます。たとえば、vSphere vMotion を使用すると、パワーオン状態の仮想マシンをホストから切り離して、メンテナンス、負荷の分散、相互に通信する仮想マシンの共存配置、仮想マシンを分離することによる障害ドメインの最小化、新しいサーバ ハードウェアへの移行などを行うことができます。

あるインベントリ フォルダから別のフォルダに仮想マシンを移動したり、同じ vCenter Server システム内で仮想マシンのクローン作成やコピーを実行することは、移行ではありません。同じ vCenter Server システム内で仮想マシンのクローン作成を行うか、仮想ディスクと構成ファイルのコピーを行うと、新しい仮想マシンが作成されます。

移行する仮想マシンの電源状態に応じて、移行にはコールド移行とホット移行があります。
コールド移行
パワーオフ状態またはサスペンド状態の仮想マシンを新しいホストに移動します。オプションで、パワーオフ状態またはサスペンド状態の仮想マシンの構成ファイルとディスク ファイルを新しいストレージの場所に再配置できます。また、コールド移行を使用して、仮想マシンをある仮想スイッチから別の仮想スイッチに移動したり、あるデータセンターから別のデータセンターに移動したりすることもできます。コールド移行を手動で実行することも、タスクをスケジュールすることもできます。
ホット移行
パワーオン状態の仮想マシンを新しいホストに移動します。オプションで、仮想マシン ディスクまたは仮想マシン フォルダを別のデータストアに移動することもできます。ホット移行は、ライブ移行または vSphere vMotion とも呼ばれます。vSphere vMotion では、可用性を中断することなく仮想マシンが移行されます。

仮想マシンのリソース タイプに応じて、3 種類の移行を実行できます。

注: 2 TB より大きいディスクを使用する仮想マシンを移行するには、ソースとターゲットの ESXi ホストのバージョンが 6.0 以降になっている必要があります。
コンピューティング リソースのみ変更します
仮想マシンをホスト、クラスタ、リソース プール、vApp などの別のコンピューティング リソースに移動しますが、そのストレージは移動しません。仮想マシンは、コールド移行またはホット移行を使用して別のコンピューティング リソースに移動することができます。パワーオン状態の仮想マシンのコンピューティング リソースを変更する場合は、vSphere vMotion を使用します。
ストレージのみ変更します
仮想ディスク、構成ファイル、またはそれらの組み合わせを含む仮想マシンとそのストレージを、同じホストの新しいデータストアに移動します。コールドまたはホット移行を使用して仮想マシンのデータストアを変更できます。パワーオン状態の仮想マシンとそのストレージを新しいデータストアに移動する場合は、Storage vMotion を使用します。
コンピューティング リソースとストレージの両方を変更します
仮想マシンを別のホストに移動し、同時にそのディスクまたは仮想マシン フォルダを別のデータストアに移動します。コールドまたはホット移行を使用してホストとデータストアを同時に変更できます。

vSphere 6.0 以降では、以下のタイプのオブジェクト間での移行を使用して、vSphere サイト間で仮想マシンを移動することができます。

別の仮想スイッチへの移行
仮想マシンのネットワークをタイプの異なる仮想スイッチに移動します。仮想マシンは、物理ネットワークと仮想ネットワークを再構成せずに移行することができます。コールド移行やホット移行を使用して、標準から標準または Distributed Switch に、および Distributed Switch から別の Distributed Switch に仮想マシンを移動することができます。Distributed Switch 間で仮想マシン ネットワークを移動すると、仮想マシンのネットワーク アダプタに関連付けられているネットワーク構成とポリシーがターゲット スイッチに転送されます。
別のデータセンターへの移行
仮想マシンを別のデータセンターに移動します。コールドまたはホット移行を使用して仮想マシンのデータセンターを変更できます。ターゲット データセンターでのネットワークでは、Distributed Switch の専用ポート グループを選択できます。
別の vCenter Server システムへの移行

仮想マシンを別の vCenter Server インスタンスに移動します。

vCenter Server 拡張リンク モードを使用してソースの vCenter Server インスタンスに接続されている vCenter Server インスタンスに仮想マシンを移動できます。

相互に長い距離を隔てて配置されている vCenter Server インスタンス間で、仮想マシンを移動することもできます。

vSphere 7.0 Update 1c 以降では、Advanced Cross vCenter vMotion を使用して、vCenter Server システム間でワークロードを移行できます。オンプレミス環境とクラウド環境のどちらからでもワークロードの移行を開始できます。Advanced Cross vCenter vMotion は、vCenter Server 拡張リンク モードまたはハイブリッド リンク モードに依存しません。また、さまざまな vCenter Single Sign-On ドメイン内の vCenter Server システム間で仮想マシンを移行できます。

vSphere 7.0 Update 3 以降では、Advanced Cross vCenter vMotion 機能を使用して、vCenter Server システム間で仮想マシンをクローン作成できます。

vCenter Server インスタンス間で vMotion を使用する場合の要件の詳細については、vCenter Server インスタンス間の vMotion の要件を参照してください。